ポピュリズム連立、揺れる伊政権
イタリア政界が迷走を始めている。極右政党「同盟」を率いるサルビーニ副首相が連立政権を解消して早期の総選挙に持ち込もうとしているからだ。左派「五つ星運動」と極右「同盟」の連立政権は、意見対立を繰り返してきたが、反移民政策で支持を集めるサルビーニ氏が総選挙前倒しに動き出したことで、イタリア政界は大きく揺さぶられている。
(パリ・安倍雅信)
極右「同盟」が総選挙画策
左派「五つ星」と対立続く
イタリアからの報道によると、イタリア議会上院は今月13日、同盟が提出した内閣不信任案の採決をひとまず見送ることに決めた。サルビーニ氏が目指す連立解消、総選挙の前倒しを警戒する五つ星運動が、野党と共闘し、反対する構えを見せたためだった。
同盟が不信任案を提出した背景には、五つ星運動と政策面で衝突を繰り返してきた経緯がある。今年6月にも意見対立が続く連立与党に業を煮やしたコンテ首相が、対立を解消できなければ「辞任する用意がある」と警告した。捨て身の姿勢を見せたにもかかわらず、事態は改善されなかった。
もともと、極右と左派の政策は正反対で、両党は2018年6月のポピュリズム(大衆迎合)連立政権発足当初から生活支援、公共事業、移民問題などで意見が合わず、五つ星運動のディマイオ党首(副首相)は、同盟のサルビーニ党首と対立し続けてきた。
多額の公的債務を抱えるイタリアの財政悪化への懸念は強く、欧州連合(EU)のルールに違反する可能性が高まっている。最近発表された第2四半期の国内総生産(GDP)成長率は0%。欧州委員会は6月5日にイタリアに財政運営の是正を勧告し、従わなければ制裁を発動する可能性を示唆した。
勧告に対して、サルビーニ氏は激しく反発し、「緊縮策で債務の増大や貧困、不安、失業の拡大を目にしてきた。逆のことをする必要がある」との声明を発表。ディマイオ副首相はEUの扱いが不公平と指摘したが、財政出動派のサルビーニ氏とは大きな隔たりがある。
今月9日付けのイタリア紙コリエレ・デラ・セラは、政治的混乱を静めるのは非政治家で構成する、いわゆる「請け負い」政府が前倒し選挙前の危機を救う唯一の方法かもしれないと報じた。一方、総選挙実施日は10月下旬から11月になる可能性があるとも予想している。
ただ、秋の解散総選挙には経済的リスクもある。すでに欧州委員会から財政是正勧告を受けている中、EUと2020年の予算交渉を行っている最中の選挙となるからだ。イタリア国債相場も政治的不透明感が強まる中、国債利回りは上昇している。
そもそも、同盟と五つ星運動が結び付いたのは、昨年の総選挙で過半数を獲得する政党がない中、政権を発足させるために、第1党の五つ星運動と第2党の同盟が手を組んだためだ。5月の欧州議会選挙では同盟が移民対策の厳格化を前面に出して支持を伸ばす一方、五つ星運動の支持率は低下し、同盟を下回った。
サルビーニ氏が支持率上昇に手応えを感じ、この機を逃さず、五つ星運動との連立を解消し、単独で政権を奪取しようとしていることは明らかだ。同盟の支持率は約38%と圧倒的に高いため、総選挙となれば躍進するのは確実視されている。
コンテ首相はオンラインビデオメッセージで「サルビーニ氏は現在の支持を最大限生かすために選挙を望んでいる」と指摘。「他の重要な当事者を無視して政治的危機の引き金を引くのは内相の仕事ではない」と厳しく非難している。
この混乱に乗じ、昨年の総選挙で惨敗した民主党のレンツィ元首相が最近、五つ星運動との連携に意欲を示したが、ディマイオ氏は「レンツィ氏とは組まない」と拒否している。ただ、今後も政党間での激しい駆け引きが続きそうだ。

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