お守りに吹く新風


地球だより

 タイを旅行したことがある人なら、必ず目にするのがプラクルアン(お守り)だ。

 このプラは、幸運を呼ぶお守りとされ、バスやタクシーなど運転席の前や飲食店など、至る所で目にする。

 タイ国民のプラ所持率は約7割とされ、お守りは生活と密着した文化となっている。

 プラ月間専門誌は、20冊以上も発行され、オークションも頻繁に開かれるなど、タイのお守りは巨大なマーケットをつくっている。その経済規模は年間600億円とも言われるほどだ。

 バンコクには100軒以上ものプラ販売店が軒を連ねる市場がある。顧客の多くは、年配の男性だ。

 そのプラ市場に新たなブームが生じている。タイでは若い女性を中心に、ファッション性が高いプラが流行の兆しを見せているからだ。

 日本の神社のお守りには大抵、お札が入っているが、プラは仏像をかたどったものや、タイの高僧の顔をモチーフにしたものが多い。

 ただ、若い女性に支持され始めているお守りは、ファッション性の高いアクセサリー風のものだ。幸運をもたらすと信じられている象やトンボといった動物や虫をイメージしたものもあり、それをタイ伝統のデザインで近代風にアレンジしてブレスレットやネックスレスに仕立ててもいる。

 プラクルアンの原点は仏教発祥の地インドにあり、タイで根付いたお守りだが、男どもは旧来の伝統にこだわり、若い女性がファッションに新風を吹き込んでいる。

(T)