動物保護に「幸せ」感じる獣医夫婦
地球だより
先日、子供を小学校に送り届けた妻が、小さな動物を胸に抱えて帰ってきた。まだ生後1カ月ぐらいの子猫だった。雨が降る道端でずぶ濡れになりながら鳴いていたという。
野良猫の群れからはぐれたのか、飼い猫が迷子になったのか、よくは分からない。ただ、顔などの皮膚がただれ、見るに堪えない状態だった。
すぐに近所の動物病院を検索し、電話をかけて事情を説明すると、「すぐに連れてきてほしい」とのこと。動物病院のドアを開けると、まだ20代に見える日系人男性とブラジル人女性の獣医夫婦が笑顔で出迎えてくれた。
子猫の体力が落ちているので、予防接種よりも体力回復が先だと言われ、この日は寄生虫の薬を飲ませ、手早くお風呂に入れてもらった。次回の診察を予約した後、料金を尋ねると「実費以外はいただきません」と言われた。診察料を受け取ってほしいと願い出るも「動物保護に対する私たちのポリシーです」と返された。
少し大きめの一軒家を改造したと思われる病院内をよく見ると、足のない犬や片目のない猫など、何かしらの不具合を抱えている動物があちこちにいた。事故や病気で見捨てられた動物たちを保護し続けているのだという。
「毎日のエサ代だけで本当に大変なのよ」。女医はそう言いつつも、「私たちにはこれが幸せなの」と笑顔で語った。日常生活の中で感じるブラジル人の「しんの強さ」と「幸せを見つける力」の一端を垣間見た気がした。子猫はわが家で元気に育っている。
(S)