米国の靖国参拝「失望」に失望


地球だより

 オバマ米政権が安倍晋三首相の靖国神社参拝に「失望」を表明したことに、逆に失望させられた。ブッシュ前政権は同盟国・日本に対する配慮から、当時の小泉純一郎首相が参拝しても、「関与しない」と中立の立場を保ったのとは大違いだ。

 オバマ政権の失望表明は中韓両国への配慮だったとの見方もある。だが、「遺憾」よりも強い「失望」という言葉を使っていることから、安倍首相に対する批判の要素が大きいと見るべきだろう。

 昨年の本紙連載『オバマの対宗教戦争』では、オバマ政権がいかに宗教的なものに不寛容で、信教の自由や建国以来の宗教的伝統が圧迫されている実態を報告したが、靖国参拝「失望」もこれに通じるものを感じた。

 もちろん、一国のリーダーである首相の行動は対外的な意味合いを持ち、靖国参拝は安倍氏個人の信教の自由だと言って片付けられる問題ではない。また、東シナ海で日中間の緊張が高まっている時期だけに、中韓両国とのさらなる関係悪化によって不測の事態が生じることだけは何としても避けたいというオバマ政権の立場は十分理解できる。

 それでも、安倍首相の「母を残し、愛する妻や子を残し、戦場で散った英霊のご冥福をお祈りをし、そして、リーダーとして手を合わせる。このことは、世界共通のリーダーの姿勢ではないか」という思いへの配慮はなく、ただ地域の安定を乱す行動は許容できないという実利主義から参拝を断罪する姿勢に、オバマ政権の本質を垣間見た気がする。

(J)