米最高裁判事にカバノー氏就任

 米連邦最高裁判事に指名された保守派のブレット・カバノー氏が6日、上院で承認され、就任した。承認に向けた手続きの終盤で性的暴行疑惑が浮上するなど波乱を経ながらも、共和党は結束して承認にこぎ着けたことで、支持層は活気づく。一方、承認阻止を目指すも敗北した民主党は反対運動の勢いを中間選挙に向けようとしている。
(ワシントン・山崎洋介)

中間選挙へ活気づく与野党
両党支持層がさらに分極化

 カバノー氏の就任は、トランプ大統領にとって、2016年大領選当選の原動力となった保守派への大きなアピール材料となった。

トランプ米大統領(右)とブレット・カバノー判事

8日、ホワイトハウスで行われた宣誓式で握手するトランプ米大統領(右)とブレット・カバノー判事(UPI)

 カバノー氏は、これまでワシントン連邦高裁判事として、2015年の裁判でオバマ前政権の医療保険制度改革(オバマケア)による企業、団体への避妊費用負担の義務化について、宗教団体の信教の自由を侵害するとの意見を表明。このほか、温室効果ガスなどに対する環境規制に反対するなど、「小さな政府」を志向する保守派の考えに沿った意見を示してきた。

 カバノー氏の就任で、最高裁判事の構成は、保守派5人に対し、リベラル派が4人となり、保守の優位が確実となった。これまでリベラル派の判事による憲法の拡大解釈によって同性婚が合法化されるなど司法の左傾化に不満を募らせてきた保守派にとっては長年の悲願達成と言え、キリスト教福音派系の有力団体「家庭調査協議会」のトニー・パーキンス会長は「ここ数十年で初めて、真に憲法に忠実な裁判所に戻った」と称賛した。

 共和党上院トップのマコネル院内総務は6日、「裁判所判事の人事ほど共和党員を団結させるものはない」と指摘。承認をめぐる与野党の対立が注目を集めたことで、支持者たちに上院の重要性が再認識されたと強調した。

 3日に発表された米公共ラジオ(NPR)などの世論調査によると、次の中間選挙が「非常に重要」と回答したのは、民主党員の82%に対し、共和党員は80%と拮抗した。7月の調査で、同じ質問に民主党員は78%、共和党員は68%だったのに比べ、「熱意」のギャップが埋まったことが分かる。

 特に上院では、今回の改選で保守色の強い州から出馬する民主党現職が多いが、そのほとんどがカバノー氏の承認について反対に回ったため、同氏を支持する有権者の反発を招く恐れがある。これが、共和党による過半数維持に有利に働くというのが大方の見方だ。

 一方、カバノー氏の承認を阻止できず、敗北した形の民主党は、今回の抗議運動で活発化したリベラル層の勢いを中間選挙に生かそうとしている。

 カバノー氏が上院で承認された6日、最高裁前で抗議を行った女性を中心とする数百人は、「11月が近づいている」とのスローガンを連呼するなど、すでに中間選挙に照準を合わせている。

 民主党のメイジー・ヒロノ上院議員は7日に出演したテレビ番組で、「(カバノー氏の承認に)当然の怒りを持つ女性たちは、レーザービームのように選挙に向けて焦点を合わせるべきだ」と呼び掛けた。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙などによる先月の世論調査によると、民主党主導の議会になることを支持する女性は58%で、共和党主導の33%を大きく上回った。

 下院の激戦区は都市郊外が多く、そこにはトランプ氏に批判的とされる高学歴の女性が多く住む。こうした女性票をさらに引き付けることで、下院で多数派の奪還を目指す民主党がより有利になるとの見方が強い。

 いずれにしても、今回、先鋭化した党派対立が、それぞれのコアな支持層の中間選挙に対する熱意を高めた。これについて、政治サイト「クック・ポリティカル・リポート」のアナリスト、デービッド・ワッサーマン氏は、カバノー氏承認をめぐる対立は「共和党支持者と民主党支持者をさらに分極化させる遠心力として働いた」と指摘している。