容疑者から略奪する警察署長


フィリピンから

 フィリピンの警察をめぐる汚職の話題は多いが、また酷(ひど)い話があったので紹介したい。このほど首都圏近郊のブラカン州で警察署長が恐喝などの容疑で逮捕された。

 調べによると逮捕された署長は、麻薬捜査で逮捕した容疑者から証拠品の名目で自家用車を押収し、これを私的に乗り回していた。そして容疑者の親族が車の返却を求めると、何とその見返りとして7万5000ペソ(約15万円)相当のiPhone(アイフォーン)の最高級モデル「iPhoneX(テン)」を要求したという。

 容疑者の親族から苦情を受けた警察当局が、ひそかに約2カ月間にわたって署長を監視したところ、逮捕した容疑者から事件とは関係ない私物を大量に押収していたことが発覚。その多くが押収品のリストに掲載されておらず、単に逮捕にかこつけて容疑者に対して略奪行為を繰り返していたことが分かった。

 この警察署からは、違法に押収された自家用車3台やバイク2台が発見されており、同じように逮捕者を恐喝に利用していた疑いも持たれている。

 ドゥテルテ大統領は、警官の汚職防止策として給与を倍増させるという破格とも言える厚遇を与えたが、署長まで上り詰めた人物のこのような麻痺(まひ)した感覚を見る限り、警察組織の浄化にはまだまだ時間がかかると言わざるを得ない。

(F)