米ペンシルベニア州下院補選 共和、トランプ氏「圧勝」の地で敗北

中間選挙に向けて打撃

 13日に投開票が行われた米東部ペンシルベニア州の下院補欠選挙は、約600票差の大接戦となり、不在者投票の再集計などが実施されたが、21日に共和党のリック・サコーン州下院議員が敗北を認めたことで、民主党のコナー・ラム元連邦検事補の勝利が決まった。共和党はアラバマ州上院補選に続き、保守の地盤で敗北したことになり、11月の中間選挙に向け、トランプ政権にとって打撃となった。(ワシントン・山崎洋介)

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4日、米ペンシルベニア州下院補欠選挙で勝利宣言した民主党のコナー・ラム候補(UPI)

 補選が実施されたペンシルベニア州下院第18選挙区は、鉄鋼の街ピッツバーグ近郊にあり、「ラストベルト」(さび付いた工業地帯)に位置する。2016年の大統領選では、トランプ氏が白人労働者層の支持を集め、同選挙区で民主党のクリントン候補に20ポイント近い差をつけた。

 海兵隊退役軍人のラム氏は、今回の選挙戦で「トランプ氏と対立するつもりはない」と表明し、トランプ政権が補選の直前に発表した関税による鉄鋼・ アルミへの輸入制限措置を支持。その一方で、共和党が成果としてアピールした昨年12月の大型減税について、「金持ちや大企業を優遇している」と批判して、労働者層からの票を獲得した。

 同選挙区は保守的な傾向が強い共和党の地盤であることから、ラム氏は妊娠中絶問題について「個人的には反対だが、中絶する法的権利は支持する」とあいまいにし、銃規制の強化については反対するなど、保守寄りの立場を示した。

 14日未明の時点で勝利宣言をしたラム氏は、「トランプ氏の支持層の票を獲得したこと」を勝因として挙げた。

 一方、シャー大統領副報道官は、ラム氏は自党の指導者よりも「トランプ氏の政策とビジョンに近い考えを持っていた」として、今回の敗北が今後に与える影響を否定した。しかし、トランプ氏が今年に入ってから2度サコーン氏の応援演説を行うなど、テコ入れを図っていたにもかかわらず勝利できなかった打撃は大きい。

 共和党のポール・ライアン下院議長は、同党下院議員らとの会合で、今回の結果は同党にとって「警鐘」だと危機感を表明し、議員たちに選挙資金を集めるように促した。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は14日の社説で、共和党が敗北した背景について、「民主党員が非常にモチベーションが高いのに比べ、共和党員はあまり熱心でないという傾向が昨年の補選やバージニア州知事選から続いている」と強調した。同紙は、これまで同選挙区で共和党候補の得票数は15万を超えていたが、今回のサコーン氏は約11万3000票にとどまる一方、ラム氏の得票数は約11万4000票と2000年以降では民主党候補で最高得票だったと指摘した。

 昨年のトランプ政権発足後、4月から6月にかけて共和党の地盤の選挙区で実施された四つの下院補選で、同党は接戦に追い込まれながらも勝利していた。しかし、その後は、11月にバージニア州知事選、12月に共和党の牙城であるアラバマ州上院補選で同党候補が敗北している。

 選挙分析に定評のある政治サイト「クック・ポリティカル・リポート」によると、現時点の予想で、下院の435議席のうち共和党は167、民主党は178を固めている。残りが接戦区となるが、このうち共和党優勢が44、民主党優勢が13、拮抗しているのが33とされている。

 今回のペンシルベニア補選の結果は、トランプ氏が大統領選で圧勝した選挙区でも、民主党候補が勝つ可能性があることを示したことになり、同党を勢いづかせることも予想される。

 こうした中、ワシントン・ポスト紙は、共和党は「11月の選挙までに劇的な変化が起きることを期待するよりも、民主党から(過半数に必要な)24議席を奪われることを防ぐための守りの戦術を考える必要があるだろう」と指摘している。