親の介護に備える
昨年の暮れ、親族から電話があった。「心配になって……」というので何事かと聞くと筆者の母からお歳暮が送られてきたのだが、なんと同じ品物が日を空けて2回送られてきたという。80歳を過ぎた母が精神的に参っているのではないかと案じたわけである。
筆者の父は3年前に他界し、実家には母が一人で暮らしている。電話でお歳暮のことを確かめると、「送るべき人に送っていないのではないか」と心配になり、気付かないまま2回送ったらしい。日常的に誰かと会話する時間が少なくなっていることも精神的に影響しているようだ。
父が他界した際、筆者は仕事を辞めて実家に戻ろうかと考えた。その時は母の近隣に住む伯父や伯母から「こっちは任せておきなさい」と言われて思いとどまった。今回は「介護離職」と言えるのか分からないが、今の仕事を辞めることも一瞬頭に浮かんだ。
総務省の調査(平成24年就業構造基本調査)で、介護をしている人の数は約557万人。このうち働きながら介護をしている人は291万人で、介護離職した人は10万人余りに上る(23年10月から24年9月の1年間)。
国としては、介護離職対策はもちろん、介護の受け皿拡大や介護人材の処遇改善を進めるという。ただ一方で、人口減少対策として今まで以上に若者・子育て世代の支援に投入しなければならない事情がある。どちらかと言えば今後は若者支援を増やす必要があるだろう。そうした予算配分を高齢世代まで幅広く理解を得ながら進めていくのは簡単ではないはずだ。筆者はかつて大平正芳内閣が提唱した「日本型福祉社会」、家庭や地域を立て直しての「自助・公助・共助」でなければ、限界にぶつかるのではないかと感じている。
いずれにしても筆者の世代にとっては、これから親の介護に本格的に取り組む時期になってくる。その備えを日々重ねていくしかないと思う。(誠)