税制改革への支持が拡大
米コラムニスト マーク・ティーセン
国民の大部分が減税に
勢いづく共和党
共和党が多数派の連邦議会で昨年12月、税制改革が承認された時、ほとんどの民主党員は、共和党にとって政治的失敗だと思っていた。ニューヨーク・タイムズ紙の調査でも、改革を支持したのはわずか37%だった。民主党のシューマー上院院内総務は誇らしげに「国民の支持を得ていない減税法案を通過させるとは、共和党もやるもんだね。こんなことは過去になかった」と揶揄(やゆ)した。
今はもうこんなことは言わなくなった。1月に支持は46%になり、今週は51%と過半数に達した。その一方で、12月に57%だった不支持は、きょうの段階で45%に減少した。変動の幅は26ポイントだ。
どうしてこのような変化が起きたのか。税金は、個人に直接影響が及ぶものだからだ。改革法は非常に複雑で、議会を通過した時、国民の多くが、自身にどのような影響があるのか分からず、不安を感じた。12月の調査で納税額が減ると思っていたのはわずか17%、32%は増えると思っていた。無党派のシンクタンク、税制センターによると、実際には、納税者の約80%の今年の納税額は、平均で約2100ドル減少する。中産階級では、その恩恵を受ける割合はさらに高く、中産階級の収入五分位(インカムクインタイル)の90%以上で減税となる。
◇基礎控除を2倍に
納税額が分かるまでには時間がかかる。2001年にジョージ・W・ブッシュ大統領が包括的減税を成立させた時の国民へのメッセージはシンプルだった。納税している全国民に減税となる。しかし、17年の共和党の税制改革では、それ以上に包括的に税制全体が見直された。税率を下げ、基礎控除を2倍にし、従来の項目別控除の多くを廃止した。そのため、納税者の多くは、増税となるのか、減税となるのかがすぐには分からなかった。
減税となっていることが分かる国民が今、増え始めている。数多くの国民が減税の恩恵を受け、源泉徴収額が減少し、給与が増えている。それとともに税制改革への支持が増えている。現在でも、減税になると思っている国民は3分の1にすぎない。トランプ大統領と共和党のおかげで、納税額が減ったことを知って驚き、喜ぶ有権者は今後、増えるはずだ。これには、法人税の減税による賞与や給与の増加や、今後、数カ月、数年で表れてくる減税による経済成長に伴う賃金上昇は含まれていない。
◇民主党員が窮地に
民主党のペロシ下院院内総務はこれらの減税を「くず」と切り捨てた。まさに特権階級の言葉だ。年間2000ドルは、サンフランシスコの富豪にとってはくずかもしれないが、ほとんどの勤勉な米国人にとっては大変な額だ。案の定、ペロシ氏のこのずれた反応に、民主党議員から非難の声が上がった。クリーバー下院議員(民主)は、「言葉は大切」「上流階級とみられるべきでない」と警告、下院民主党の幹部の一人、クローリー議員は、「年収4万ドルの人にとって、この手取りの増加は非常に大きい」と述べた。
手取りの増加に反対票を投じた民主党員は、窮地に陥っている。税制改革への国民の支持が高まることは、トランプ氏が二桁差で勝利した州で再選への不利な戦いに臨む5人の民主党上院議員にとっては特に都合が悪い。全員が、なぜ「抵抗」に加担したのか、なぜ有権者の減税に反対したのかの説明に追われることになる。
減税の成功に共和党候補は勢いづいている。トランプ氏が36ポイント差で勝利したノースダコタ州で、民主党のハイディ・ハイトカンプ上院議員は、ケビン・クレイマー下院議員(共和)との厳しい戦いを強いられることになった。先月の時点でクレイマー氏は、出馬しないことを表明していた。心変わりした理由は何だろう。ワシントン・ポスト紙によると、その理由の一つは、ハイトカンプ氏が税制改革に反対票を投じたことが「致命的」だったとクレイマー氏が考えているからだと報じた。
同じように考える共和党候補者、激戦州の有権者は多いはずだ。
(2月23日)






