米が準備する“鼻血作戦”

高 永喆

 北朝鮮は昨年12月、習近平中国国家主席の特使を門前払いするなど米・中の対話プロポーズを拒み続けたが、年が明けてからは平昌五輪参加をはじめ融和ムードを造成し米国の軍事行動にブレーキを掛けようと懸命だ。

 先日は李容浩外相が国連事務総長に米国の核戦争挑発を止めてほしいと書簡を送ったりもした。

 急に融和路線に舵を切った背景には、米国が主導する最大の制裁と軍事圧力の効果があるのだろう。北朝鮮が相当焦りを感じている証である。

 とはいえ北朝鮮の狙いは真の融和でなく偽装平和攻勢なので、半島危機はむしろ増大していると言える。

 米政府が準備中の軍事オプションとして「Bloody Nose(鼻血)作戦」が注目を集めているが、これは同欄で何度も取り上げた北核施設とミサイル基地だけを外科手術打撃する限定攻撃のことである。

 ちょうど外科手術前の麻酔と同様に、北の通信網、電算網、電力網を電子撹乱機とミサイルで麻痺させてから打撃するので、外科手術打撃という。

 攻撃前に敵の反撃に備えて最大の戦力を半島周辺に事前配備(臨戦態勢)して行う予防攻撃であるが、相手が反撃する場合は、本格的な第2波、第3波の空襲を加えて短時間で敵を制圧する仕組みである。

 従って、北朝鮮は昨年のシリア空爆の前例のように、反撃の間もなくやられる可能性が高い。

 しかし、米ジョージタウン大学教授のビクター・チャ氏がこれに反対して駐韓米国大使の任命が取り消された。彼は北の反撃を招いて米軍家族が多数犠牲になると反対したという。

 もう一つ解任の背景として考えられるのは、チャ氏と夫人の両親が全て韓国の伝統的な親北、野党優勢地域である全羅南道康津郡の出身であることだ。

 トランプ大統領の安保担当の参謀陣は軍の現場経験が長いプロと制服組のベテランで構成されている。外科手術打撃の標的に北の砲兵部隊が含まれてない理由は、万が一北朝鮮がこれで反撃すれば、韓国の北に対する敵愾心が沸騰することによって米韓連合軍の作戦が容易になるという狙いだろう。

 金正恩政権が生き残る選択肢は南北共倒れにつながる恫喝・脅迫をやめて、南北の平和共存・同伴成長を目指すのが最善策である。それこそが韓半島の非核化である。

(拓殖大学客員研究員・韓国統一振興院専任教授)