過去の世界に生きる人々
地球だより
独週刊誌シュピーゲル電子版(1月28日)に「旧ドイツ帝国公民」運動の昨年の犯罪件数が掲載されている。昨年、同メンバーによる政治的動機に基づく身体傷害、扇動、放火、脅迫などの犯罪件数は771件だった(ドイツ連邦刑事局調べ)。そのうち、619件は実行犯だ。
シュピーゲル誌によると、ドイツでは約1万6500人の自称・「旧ドイツ帝国公民」がいる。そのうち、約1100人は合法的に武器を所持している。前年2016年には公民総数は1万人と推定されていたから、過去1年間で急増したことになる。
「旧ドイツ帝国公民」は、ドイツ連邦共和国や現行の「基本法」(「憲法」に相当)を認めない。だから、政治家や国家公務員も認知しない。ドイツは過去にしか存在しないということだ。
独連邦憲法擁護庁は「旧ドイツ帝国公民」運動を新しい過激主義運動と受け取り、警戒を強め、2016年から監視対象としている。
ドイツでは16年10月、バイエルン州で一人の「旧ドイツ帝国公民」(ヴォルフガング・P)が警察官を射殺した事件が発生している。Pは昨年10月の裁判で終身刑の判決を受けた。
イスラム過激派組織「イスラム国」(IS)がカリフ国家の復興を叫ぶように、「旧ドイツ帝国公民」運動メンバーは、実存しない「ファンタジー帝国」を夢見、そこに住み続けるわけだ。彼らは次第にアナーキーとなり、過激主義に陥っていく。
(O)