自主憲法の制定を急げ
自衛隊の「基礎体力」減衰
祖国防衛の任務も明示を
米誌「ニューズウィーク」日本版8月15、22日夏季合併号は、「日本の未来予想図」と題し、「今から約100年前、1920年(大正9年)の日本の人口は5600万人だった。1憶2700万人にまで増えた日本人」だが、急速な「少子高齢化で迫りくる人口大減少、国際舞台で現在の影響力を維持できなくなった日本の未来像は中国の衛星国か? 近づく恐ろしい未来に日本人がどう立ち向かうべきか、『窮地に活路』を示す」とし、次のような未来予想を提示している。中国の機嫌を伺う衛星国か、平等な世界における中堅国になるか、日本の運命を握るのは中国とアメリカ、日本の指導者である。日本の先進国陥落は間近、戦後幻想の終焉(しゅうえん)と断定し、少子高齢化、人口減少で社会の変化、日本の未来を予想し、特に、経済、国防について詳述している。要約すれば次の通りである。
経済について「先進国陥落は間近、戦後幻想の終焉」と題し、米国以外のほとんどの先進国が人口減少を迎える中、早く、かつ極端に影響を受けるのは日本である。国内総生産(GDP)は人口と生産性の掛け算だ。日本のGDPは世界第3位と優位であるが、それは人口が多いからだ。戦後の人口成長率は先進国で断トツで、現在、日本の人口は約1億2700万人で、米国に次ぐ2位にある。しかし、少子高齢化現象は、先進国の中で最も早くなる。今までの働き方を変えなければ、日本経済は縮小し、1000兆円以上の借金と社会保障によって崩壊しよう。国民は知恵を絞り、努力し、生産性の向上を図り。GDPの維持向上に邁進(まいしん)すべきである。
国防について「『普通の国』日本の戦争のできない未来」と題し、「集団的自衛権の行使容認に憲法改正、そして自衛隊の国防軍化へと進んでも、もっと深刻な問題で、防衛力が維持不能に?」と指摘し、自衛隊の「基礎体力」の減衰を次のように憂慮している。内閣府発表の高齢社会白書によれば、2036年には高齢者(65歳以上)は全人口の33・3%で、その後も増え続けると予測している。これは老齢年金の増加となり、防衛費の増加を至難とする。
筆者は経済については極めて疎い。しかし国防については経験もあり、関心も強く、小国北朝鮮の核、ミサイル開発、中国の中華大国化の野望等は日本の安全と独立に不安を感じている。幸いに経済の維持ができたとしても、国防の「基礎体力」たる自衛隊員の不足を生じよう。
マッカーサー元帥は、その真意は理解できないが、「日本は東洋のスイスたれ」と言明した。スイスは連合共和国で、永世中立国である。仏、独、伊等5カ国に囲まれた山国である。面積は九州よりやや小さく、人口は約842万人の小国である。過去、数度の外敵の侵略に対し、挙国一致で国民は勇敢に戦い、国を守り、独立を堅持してきた。兵力は徴兵制度で30万人である。なお、国内は地形を利用し、要塞(ようさい)化している。
日本は憲法により軍備を禁じ、自衛隊と称する武装集団を編成し、隊員は23万人未満である。しかし、諸外国は自衛隊を精鋭な軍として対応している。隊員は国防を主任務と自覚し、闘訓練、勤務に精励している。今やほとんどの国民はこれを容認しているだろう。しかし、戦争放棄の平和憲法を信奉し、諸外国のように国防を国民の義務として自覚せず、自主防衛の意欲に乏しく「平和ボケ」が続いた。
防衛大学校創設時、作家の大江健三郎氏は「同世代の恥」と称し、非難した。国民も保安隊とその後の自衛隊を、災害派遣隊程度と軽視していたと言えよう。敗戦前は、小学生から、教育勅語により「一旦緩急あれば義勇公に奉じ」と教えられ、元寇、日清、日露戦争における将兵の敢闘等について教えられた。敗戦後の教育は、国防については無視され、戦争は全て悪、平和願望一辺倒であったと言えよう。
昨年、本欄で「憲法第9条は亡国ヘの道」と題し、戦後教育の偏向により、日本人は「平和ボケ」したと述べた。平成25年発行の高校「現代社会」は「憲法前文に不戦を明示し、決意を具体化したのが第9条である。日本国憲法の平和主義を世界的に認めさせている」と説明している。
祖国防衛のため努力するのは国民の義務である。しかし憲法学者が自衛隊は違憲とし、教育もこのような国防、自衛隊を軽視した状態である。従って、現在でも隊員募集は容易ではない。少子高齢化が進む将来を思うと、前述のように「国防の基礎体力」の減衰は避けられないだろう。
安倍総理の憲法改正への意欲は強いが、第9条に自衛隊加憲にとどめる意向である。国民世論を考慮すれば、完全な自主憲法の制定は不可能で、改憲の道を開くことにとどめたのであろう。しかし、国際情勢の緊迫、特に北朝鮮の核保有。中国の中華大国復興の野心による領域拡大は対日脅威である。侵略抑止力として、軍事力は必要である。自衛隊の任務として祖国防衛を明示すべきであり、そのために前文の修正は必要である。国民も賛成しよう。
(たけだ・ごろう)