THAAD配備、反対派が資材搬入を“検問”
日本の安保法制反対でも加勢に
北朝鮮による6回目の核実験や立て続けの弾道ミサイル発射に韓国が揺れている。戦術核再配備の必要性が叫ばれる一方、迎撃ミサイル追加搬入には過激な反対行動も見られる。完成段階を迎えつつある北の核開発に韓国はどう向き合おうとしているのか。現地から報告する。(星州=韓国慶尚北道・上田勇実)
今月3日、北朝鮮が「水爆」と称して強行した6回目の核実験は当初、広島型原爆の約10倍の威力と推定された。だが、韓国の核専門家の間では「実際には広島型の60倍に相当する1メガトン(TNT火薬換算)だった」(元韓国国防研究院幹部)とする見方も出ている。その衝撃は韓国・文在寅大統領に、これまで難色を示してきた迎撃兵器、高高度防衛ミサイル(THAAD)の発射台追加搬入を決断させるに至らしめた。
しかし、追加搬入された南東部、星州郡にある旧ロッテ・スカイホール星州カントリークラブに通じる道路脇の公民館付近では、搬入が終わった今もなお反対運動が続いている。
「THAADは米国が北東アジアで軍事的優位を保つためのもの。わが国は軍事的に米国の植民地になってしまったようだ。文大統領も訪米後、米国のイヌになってしまい失望している」
こう話すのは文大統領による追加搬入に激しく抵抗した住民の一人、朴鐵柱さん(52)。普段は農作業で忙しいが、この問題で反対運動に専念しているという。誰かに感化されたかのような理論武装だ。
ゴルフ場につながる道路では住民に交じって活動家が“検問”していた。ここを通り過ぎようとする車を一台一台止め、ミサイル関連の装備や燃料などが運び込まれるのを阻止するためだ。
ソウルから応援に駆け付けたという市民団体「平和と統一を開く人々」の李周恩・青年チーム長は「朴槿恵前政権の積弊を清算すると言っていた文大統領が積弊の一つであるTHAADの追加搬入を奇襲作戦のように強行したのは許せない」と文政権を糾弾する。
同団体のメンバーは昨夏、THAADシステムに使われるものと同型のXバンド・レーダーがある京都・経ケ岬の米軍施設を訪れ、無断で敷地内に侵入し撮影していた疑いで府警の聴取を受けたことがある。
その動画は朴前大統領弾劾に向けた決定的証拠のタブレットを暴露したことで「反保守の先鋒(せんぽう)」に立ったケーブルテレビ局JTBCに提供され、ニュース番組で「電波と騒音の被害が続出」と紹介された。「電波は細胞の遺伝子を損傷することがない周波数帯であるため人体の健康被害はなく、被害事例も報告されていない」(防衛省資料)ことを無視した歪曲(わいきょく)報道である。
この団体は「沖縄や岩国の基地反対運動で日本と連帯したり、安保法制反対に加勢した」(李チーム長)そうで、日本の左翼と深い関係にある。
これほどまで北朝鮮の核・ミサイル脅威が差し迫っているにもかかわらず、ここは米国への憎悪と文政権への失望で頭がいっぱいだ。抑止の論理は掻(か)き消されてしまい、ひたすら「平和」だけを口にしている。
この地は韓国発祥の仏教「圓仏教」の聖地で、追加搬入の際は僧侶らも実力阻止を手伝った。抵抗した数百人を排除するため動員された機動隊には「宗教ケアチーム」と記されたチョッキを着た警察官たちもいたが、結局は双方が乱闘に加わったという。
その必要性が急浮上している戦術核再配備を支持するある保守系学者はこう嘆く。
「THAAD配備だけでもあの大騒ぎ。戦術核になったらそれ以上だろう。北が威嚇しているこの重大事に韓国社会は分裂ばかりしている」








