核凍結で米朝ディールも
元青瓦台外交安保首席秘書官 千英宇氏に聞く
北朝鮮による6回目の核実験はどのような意味を持つか。

チョン・ヨンウ 1952年生まれ。釜山大学卒後、外務省入り。2006年から08年まで北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議の韓国首席代表。李明博政権で青瓦台外交安保首席秘書官。13年から韓半島未来フォーラム理事長。
北朝鮮は核の弾頭化、小型化、爆発力などの面で成果を挙げ、これ以上の核実験は必要ない段階に差し掛かった。北朝鮮が望む核兵器としての水準、実戦で使用できる水準に到達したという意味で深刻だ。米国まで届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)を開発したことを考え併せると、核・ミサイル開発の目標にほとんど達したといえる。
この状態で北朝鮮が対話に復帰したとしても非核化という目標達成は難しくなった。現水準の核に凍結する以上のことを期待するのが難しくなった。
米本土まで攻撃できる力を持ったため、米国が北朝鮮を先制攻撃する時に韓国の発言力がなくなった。これまでは最も大きい利害当事国である韓国の同意が必要だったが、今後は同意なく先制攻撃できる名分を米国は持つようになった。韓国は北朝鮮核問題をめぐる軍事的対応において統制権を失い、米国は韓国が望まない軍事攻撃が可能になった。
北朝鮮は落とし所をどこにしようとしているだろうか。
弾道ミサイルの大気圏再進入技術を完成させたことを見せた後、米国と核凍結でディールするのではないか。米本土まで届くICBMは実戦配備しない代わりに、韓国、日本、グアムまで攻撃できる核は今後も保有し続けるという線での凍結だ。これによって北朝鮮が得る見返りは制裁解除、米韓演習の中断、米戦略資産の半島周辺からの撤収などだ。そうなれば北朝鮮は核・経済の並進路線で成果を出せるようになる。
仮にそうなった場合、国際社会が望む非核化は遠ざかる。
今後、核凍結をめぐり米国と日韓との間で政策的対立が生じる可能性がある。米国は北朝鮮に核凍結させて本土攻撃を防ごうとするが、それは日韓にとってはメリットがない。北朝鮮が同じ能力を持っていたとしても、それを違法行為として制裁し続けるのと、制裁解除してその能力を認めてしまのとは全く違う話。米国が北朝鮮と核凍結で合意した場合、日韓にとっては核凍結しないことより政治的、軍事的に悪いかもしれない。
国連安保理の対北制裁決議では制裁履行に消極的な中国がカギを握る。
米国が中国に対するセカンダリー・ボイコット(北朝鮮との貿易・金融取引がある国への制裁)だけでなく、あらゆる貿易報復手段を総動員し、北朝鮮の核問題解決に協力しない代価として中国が年間数千億㌦の経済損失を被るようにさせれば、中国は北朝鮮が崩壊寸前に追い込まれることに協力するだろう。中国は自発的にも奇麗事でも絶対動かない。
現時点ですべき外交努力は。
平和的に非核化を達成する唯一の方法は北朝鮮に対する全面的な経済封鎖だ。そのためには国連安保理決議では話にならず、米国を説得して、米中関係が悪化したとしても中国に対北全面経済制裁させるよう日韓が力を合わせることに集中すべきだ。
対話が重要だと言う人がいるが、北朝鮮が十分圧迫されない状態で対話をすれば北朝鮮の思い通りに対話が引っ張られていく。それを知らずに対話をするのが一番危険だ。
(聞き手=ソウル・上田勇実)
=終わり=