米韓演習、北の挑発に万全の備えを


 米韓両軍が韓半島有事を想定した定例の合同演習を始めた。北朝鮮は強く反発しており、米領グアム島沖への弾道ミサイル発射など北の挑発行為に対する万全の備えが欠かせない。

核施設への先制攻撃想定

 演習は31日まで行われ、米軍約1万7500人、韓国軍約5万人が参加する。コンピューターシミュレーションで増援態勢など指揮命令系統を確認する机上訓練が中心だ。

 演習内容は、米韓が2015年に策定した「作戦計画5015」を適用。北朝鮮の核・ミサイル施設への先制攻撃や金正恩朝鮮労働党委員長ら首脳部を狙い撃ちする「斬首作戦」などを想定しているとされる。北朝鮮への大きな圧力となろう。

 問題は北朝鮮の出方だ。朝鮮労働党機関紙・労働新聞(電子版)は「無謀な戦争脚本を実行しようとしている」と演習を非難した。

 北朝鮮は日本上空を通過させてグアム周辺へ弾道ミサイルを発射する計画を公表している。金委員長は「米国の行動をもう少し見守る」と述べ、一時保留しているが、演習の期間中に計画を実行に移す恐れがある。

 過去にも、北朝鮮は演習期間中に挑発行為を行った。昨年は潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験を実施。演習終了直後の9月9日には5回目の核実験を強行した。

 北朝鮮のミサイル発射計画公表を受け、島根、広島、愛媛、高知の4県にはミサイル落下に備えて地対空誘導弾パトリオット(PAC3)が展開された。日米韓3カ国は十分に警戒しなければならない。

 グアムには米戦略爆撃機「B1」が配備され、北朝鮮にとっては大きな脅威となっている。B1はグアムから約2時間で韓半島に到達し、レーダーで捉えにくいステルス性能も高い。ミサイル発射計画は、米軍を牽制(けんせい)する狙いもあろう。

 一方、北朝鮮の後ろ盾である中国は米韓演習を「現在の緊張の緩和や、対話を促す努力にとって不利になる」と批判した。中国は北朝鮮の核・ミサイル開発と米韓演習の双方を暫定的に停止する「双暫停」を主張している。

 だが、北の核・ミサイル開発は国連安全保障理事会決議に違反する行為だ。安保理常任理事国の中国は無条件で中止を求めるべき立場ではないか。

 中国が在韓米軍への最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備に反対していることも理解し難い。周辺地域の安全保障のバランスを崩すなどとしているが、北朝鮮を側面支援していると受け取られても仕方がないだろう。

 トランプ米政権は中国の北朝鮮への影響力行使に期待を示してきた。北朝鮮による2度の大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射を受け、中国も安保理の対北制裁決議に同意したが、北の核・ミサイル開発阻止に向け、本気度が問われる。

日本は緊密な連携を

 北朝鮮の挑発抑止のため、日本は演習を行う米韓両国と緊密に連携すべきだ。中国に対しても、北朝鮮への石油輸出禁止など実効ある措置を取るよう働き掛ける必要がある。