米国内の中国スパイ2万5千人、中国人実業家語る
米国内の中国のスパイネットワークは、最大2万5000人の工作員、米国で勧誘された要員1万5000人以上を擁し、2012年以降、攻撃的なスパイ活動に転じた。中国の軍・情報機関幹部らと交流があるとされる中国人実業家、郭文貴氏が明らかにした。
不動産投資家の郭氏は、2015年に中国を脱出、中国共産党幹部らの不正を暴露しており、中国政府は1月から同氏への監視を強化しているという。現在はニューヨークに滞在、米国のマスコミのインタビューを受けるのは初めてだ。
郭氏によると、1989年の民主化要求運動、天安門事件で兄弟が警官によって殺害された。「制度全体を変えるべきだと思っている」と中国の民主化への意欲を示した。
郭氏によると、中国の米国での情報活動は、2012年に現在の国家主席、習近平氏が中国共産党の最高職、中央委員会総書記など権力を掌握して以来大幅に強化された。
「12年まで米国で活動する工作員は1万~2万人だった。50年かけて送り込まれた工作員で、主に情報を集める防御的な活動をしていた」が、12年に「米国の破壊」を目指す「攻撃的な」スパイ活動に転換したという。
12年ごろに、5000人の工作員を学生、実業家、移民などの形で派遣することが決められ、さらに1万5000人から1万8000人を米国内で勧誘。それとともに12年まで年間6億㌦だった予算は増額され、現在は30億~40億㌦に達するという。
郭氏は「中国のどの組織がスパイを送り、どのように管理されているか米国は知らない。米国はスパイの問題を法治主義的な観点で見ているが、中国が取っている方法を米国は理解していない」と、米情報機関が、中国の情報機関について無知だと指摘した。
中国の情報活動の第1の標的は、「兵器関連の情報」を得ることだという。第2は米高官を「買収」、第3は政界、実業界のエリートの家族を買収すること、第4は、悪意のあるソフトウエアを埋め込むことで、米国のインターネット、重要インフラに侵入することだと郭氏は指摘した。
郭氏は北朝鮮とも太いパイプを持っている。
「北朝鮮と中国の間の貿易はすべて、支配層の親族が行っている」と指摘した上で、北朝鮮問題への対応を中国に期待することは「ばかげている」と指摘した。
ジョージ・W・ブッシュ政権の国家テロ対策行政官だったミシェル・バン・クリーブ氏は、15年6月に米人事管理局(OPM)のデータベースが中国のサイバー攻撃を受け、2200万人の職員の情報が流出したことについて、「中国は機密情報にアクセスできる請負業者、政府職員の名簿を持っている」と指摘、これらの情報は、スパイ活動の基盤を拡張するための新たな情報源を得るための勧誘、脅迫などに利用されるとの見方を明らかにした。
また、連邦捜査局(FBI)の元工作員I・C・スミス氏は、「中国は米国の友人ではない。中国共産党が権力を握っている限り、国際社会の責任ある一員には決してならない」と中国のスパイ活動に対して警戒感をあらわにした。