ノーベル文学賞に思う


金子 民雄

歴史家 金子 民雄

 今、思うと年代がはっきりしないのだが、井上靖氏のノーベル文学賞がさっぱり決まらない頃のことだったと思う。噂(うわさ)ばかりは高いのだが、私が得ていたニュースでは、この受賞はかなり厳しいものだったようだ。井上氏とはある集会の合間にたまたま顔を合わせたので、テーブルを挟んで雑談を交わした。この時、一般に書き遺(のこ)されたものは、文字として後世に残されるだろうが、音楽というのは音が消えてしまうので、どうしても記録に残すのは難しい。やはり書き物でないと後世の評価はだめのようだ、といったたわいもない話だったようだ。


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