子宮頸がんワクチン副反応研究の神経班除外に疑問示すTBS報道
◆厚労省に懐疑的報道
重篤な副反応を訴える少女たちが相次いだことで接種勧奨が一時中止になっている子宮頸(けい)がんワクチン問題で、厚生労働省の専門部会が今月4日、約4カ月ぶりに開かれた。ここで報告されたのは痛みを軽減する治療を行った結果、7割近くの患者の痛みが改善したという研究班の調査内容だった。
この調査については新聞・テレビをはじめどの報道機関も報道したが、その中で目立ったのは、厚労省の対応に対するTBSの懐疑的な報道姿勢だった。例えば、7日放送のニュース・情報番組「Nスタ」は、患者の心理面に配慮した治療を行った結果、67%が「痛みが良くなった」という前出の調査結果を伝えたが、その一方で、「ワクチンの成分自体に問題はない」という厚労省の見解に、専門家から異論が出ていることをかなり時間を割いて紹介した。
その専門家というのは、東京医科大学総合研究所の西岡久寿樹所長。ワクチン接種のあと、痛みだけでなく、記憶障害や計算障害を訴える少女がいることについて「認知症みたいな症状が子供たちに見られることを聞いて、これは脳神経の炎症によって起こってくる病気だと思う」と語った。つまり、副反応にワクチンの成分が関係している可能性を見ているのだ。
また、8日放送の報道番組「NEWS23」は、4日の専門部会で発表された患者のための新たな診療体制から、神経中心の班が外されたことを取り上げた。これまでは、痛み中心の班と、神経中心の班の二つの班から成る診療体制を整えていた。
◆「心身反応」は意図的
本紙5日付でも指摘したことだが、信州大学の池田修一・医学部長が中心となった神経中心班は6月に、副反応を「心身の反応」とした部会の結論に対する反論を発表している。患者の神経にむくみなどが見られることから、ワクチンの成分に問題があると考えられるのだ。
神経中心班が外されたことについては、厚労省の検討会でも委員から批判が上がったが、「窓口の一元化」というのが厚労省の説明である。果たして、この説明にどれだけの人が納得するというのだろうか。ワクチンの成分に問題はなく、副反応は「心身の反応」とする部会の見解に都合の悪い専門家を排除したと受け取られても仕方あるまい。
このほか、2日放送の「NEWS23」は、ワクチンの副反応で歩行障害に陥った少女が病院で診察を受けても「副反応として信じてもらえない」と訴えるケースを挙げながら、患者は治療先を求めて平均9カ所の医療機関を回っているという深刻な事態を紹介した。
副反応は「心身の反応」とした見解は、科学的に裏付けられたものではない。ただ現段階ではワクチンの成分が副反応の原因として科学的に立証されていないことから導き出された推論にすぎない。
それなのに、ワクチンの成分と副反応の関連性を検証する作業を排除する厚労省の一連の動きを見ると、「心身の反応」で決着させて、ワクチン接種の勧奨を再開させようとの意図が働いているように見える。
◆TBSは追及姿勢を
冒頭で示した7割の患者の痛みが軽減したというのも、詳細に分析すると、疑問が湧いてくる。研究班に参加する全国11の医療機関を受診した患者は162人だが、そのうちワクチン接種との関係が否定できないのは112人だった。さらにこのうち、治療の経過が判明したのが70人で、その中で痛みが改善したのが47人。だから、患者の67%で痛みが改善したというのだ。
しかし、112人以外は本当にワクチン接種と無関係と断定できるのか。厚労省は接種から1カ月以内に起きる症状に限定して副反応と認めているが、長い期間で症状が変化しているケースもあり、1カ月以内と限定するのは時期尚早であろう。また、痛みは改善しても、そのほかの症状はどうなったのか。さらに詳細な情報を公表すべきである。
少女ら患者側、つまり弱い立場に立って医療行政へのチェック機能を果たすことはジャーナリズムの原点である。その姿勢を貫いてこその報道機関である。今後のTBSの頑張りに期待したい。
(森田清策)