タイの愛国映画の不気味な予言


地球だより

 タイ軍事政権は歴史大作映画「キング・ナレスワン5」を15日、無料公開する。タイ全土の映画館160スクリーンで上映される。外国人は除外され、タイ人限定のサービスで、ナショナリズムの高揚と軍政支持取り付けを狙う。

 「キング・ナレスワン」シリーズは16世紀にビルマ軍を追い払いタイの独立を回復させた救国の英雄ナレスワン王を描いた映画。ナレスワン王はタイ三大王の一人で、50バーツ(約160円)紙幣の裏面に肖像が使用されている。

 日本で言えば徳川家康にも似た人物だ。ビルマに人質として暮らしたが、そこで習得した武術を帰国後、タイ兵士の武力向上に使った。それがタイの国技とも言われるムエタイを生んだとされる。ムエタイの生みの親という意味からムエタイ選手は彼の像の前で、戦勝を祈ったりもする。

 なお、ナレスワン王は自ら兵を率いてアユタヤから北上し、チェンマイ北部に入った時、そこで病死している。

 タイ北部のチェンマイや北東部というと、軍事政権が排除したタクシン派の地盤でもある。軍事政権がバックアップするナレスワン王の映画は、不気味な予言をもはらんでいるようにも受け止められる。

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