飼育は相手の気持ちに寄り添う感性を育む時

「飼ってよかった」と実感する動物飼育

全国学校飼育動物研究会が研究大会(4)

桑原保光氏、動物飼育を通じて教科超えた学習効果も

 「『飼ってよかった』と実感する動物飼育」をテーマに第23回全国学校飼育動物研究大会(主催・全国学校飼育動物研究会、鳩貝太郎会長)がこのほど、Zoomを使ったオンラインで行われた。群馬県獣医師会会長・全国学校飼育動物研究会副会長の桑原保光氏は「学校における望ましい動物飼育のあり方」と題して動物と接し、愛で、最後まで丁寧に飼うことの大切さについて提言した。


飼育は相手の気持ちに寄り添う感性を育む時

群馬県獣医師会会長の桑原保光氏

 現行の生活科は平成10年に始まった新しい教科。動物を飼ったり、植物を育てることが学習指導要領に組み込まれ、学校での動物飼育が盛んになった。群馬県では動物飼育を通じて「命の大切さ」を児童に伝えていこうと、獣医師会と委託契約を結び、各学校に学校獣医師を置くことになった。

 何の動物を飼育するか、どのように飼育するかは、学校の所在地、周辺の環境によって違ってくる。群馬県の例を挙げて考えてみたい。学校の規模、施設、担当教職員の数・経験などによるが、指導教職員の経験が少ない学校では、負担の少ない“入門編”といえるハムスターや小鳥から始めるのが良いでしょう。少し手のかかる“応用編”としてモルモットやチャボを野外で飼う、手がかかるが、子供たちで手に負えないほどではない“上級編”としてウサギやニワトリという選択の仕方が望ましい。地域でよく飼われている動物なら学校近くに居住するボランティアの支援を受けるなど地域の協力者も得やすいでしょう。

 動物の飼育舎は児童たちが絶えず目が行き届く場所、短い休憩時間でも立ち寄れるような昇降口とか、廊下とか、校舎内で飼育ができれば良いかなと思う。屋外飼育だと、夏場の直射日光、冬場の寒気で動物の体調変化が著しいし、それへの対応を考えないといけなくなる。

 衛生管理と糞尿(ふんにょう)処理対策も重要な視点。教室内に異臭が漂ったり、住宅地だと、近隣住民から苦情が出ることもある。ウサギの場合、同じ所をトイレにする習性があり、固定式のものに、アンモニア濃度を下げる消臭チップを入れることが好ましい。言葉を発しない動物の世話を通して、相手の気持ちに寄り添う、理解できる子供に成長してもらいたい。また、生命の神秘性を感じる心を育みたい。動物との接触が苦手な子供もいる。無理をせず、タオルで包んで抱くことから始め、少しでも触れるように指導していく。できないことができるようになる。これが、生活科のポイントの一つだ。

 動物介在教育の重要性を考えると、何ができるようになるか、何を学ぶか、どのように学ぶか、子供の発達段階に応じて、どのように支援するか、何が身に付いたか、実践するために何が必要か、現場の教職員は考え、生活科の動物飼育を通じて、命の体験学習、感動として、理科、道徳、総合学習、飼育ノートをつけることで国語、絵を描いたり、粘土細工で図画工作の学習につなげられる。