「ナルコノン」オープン、薬物から人生取り戻す
米国で生まれた薬物リハビリテーション施設「ナルコノン」(一般社団法人)が今年4月、千葉県市原市にオープンした。その1年前、開設準備中だった代表の神野正啓さん(42)にインタビューしたのが縁で、筆者は今年6月、見学に訪れた。緑に囲まれ長閑(のどか)な環境は薬物と縁を切り、人生を再出発するにはふさわしい場所だった。
最近、神野さんに話を聞く機会があった。これまでに1人が〝卒業〟し、現在3人がリハビリ中。アルコール依存から回復した卒業生は今、施設のスタッフとして働いている。
生徒(施設ではそう呼んでいる)3人は市販薬、処方薬、覚醒剤とそれぞれ乱用していた薬物は違うが、順調にプログラムが進み、スタッフはその効果に自信を深めているという。
施設に入れば生徒たちは皆、「ウィズドロー(薬断ち)」「ニューライフデトックスフィケーション(薬抜き)」など4段階のプログラムを素直にこなすが、「乱用者を施設に連れてくるまでが大変」と神野さん。
これまでに120件余りの相談が寄せられ、そのうち100件は家族からのものだった。相談があり、自宅を訪問すると、「(乱用者が)錯乱状態で、何があったのか、分からないケースもあった」。
薬剤師の資格を持ち、かつて製薬会社に勤めていた時、さまざまな薬物依存症になる人を多く見たことで、この問題の解決策を考えるようになったという神野さんだが、責任が伴うだけに、むやみに乱用者を受け入れるわけにはいかない。
費用を聞いて、最初は生徒や家族は「高い」と言うが、途中から「安い」と思うようになるそうだ。薬物との縁が切れなければ生涯でどれだけお金を無駄にするか分からない。何より、人生を取り戻せるのだから「安い」と感じるのもうなずける。卒業生にいつかインタビューしたいと思う。
(森)