岸田新内閣発足 総裁選公約の着実な実行を


 自民党の岸田文雄総裁が第100代首相に選出され、新内閣を発足させた。岸田首相は所信表明演説などを通じ、国民に国家の針路や政治理念、重要政策を訴える予定だ。
 自民党総裁選で打ち出した公約をさらに具体化して分かりやすく語り、着実に実行に移してもらいたい。

 党との調整が課題

 岸田首相はまた、会期末の14日に衆院を解散して「19日公示、31日投開票」の日程で総選挙を行う意向を明らかにした。発足したばかりの政権に審判を下さなければならない有権者の側も、政権の真価を早々と見定めることが求められている。

第100代内閣総理大臣に指名され起立して周りに礼をする自民党の岸田文雄総裁(画面右奥)=4日午後、国会内(UPI) 

 岸田首相は閣僚人事で、茂木敏充外相と岸信夫防衛相を留任させた。中国や北朝鮮による挑発行為が激増し安全保障環境が厳しくなる中、継続性や安定性を重視したためだ。また、40歳代2人、50歳代5人を起用し、13人を初入閣させて「老・壮・青」のバランスの取れた布陣を敷いた。

 初入閣の目安とされる衆院当選5回以上に届かない当選3回生を3人抜擢(ばってき)したところには「岸田カラー」を見て取れる。経済安全保障担当相を新設し、外交・防衛政策に加えて軍事力を使わない経済戦争に対峙(たいじ)するため経済インテリジェンスにも関与する司令塔役を初入閣組に任せることにした。デジタルや新型コロナウイルスワクチン接種など重要なポストも若手に担当させる。

 他方、党は政策通の甘利明氏を幹事長に据え、総裁選の決選投票で岸田支援に回った高市早苗氏を政調会長に、若手代表格の福田達夫氏を総務会長に抜擢し、新鮮な「生まれ変わった党」を印象付けた。全体として細田派、麻生派、岸田派、旧竹下派を基盤とし、二階派などが支える政権構造となった。

 岸田首相は就任記者会見で「信頼と共感の得られる政治」を目指す考えを示して「新時代共創内閣」と自ら銘打った。ただ問いたいのは、「聞く力は誰よりも優れている」という岸田首相に、政策の選択力と決断力、実行力が伴うかどうかだ。聞くばかりでは優柔不断となり、政策の推進力を欠く。

 総裁選での公約を着実に進める上でも、党の政策立案責任者で論戦を展開した政調会長や幹事長らと公約のズレや実現への道筋の調整を早急にしなければならない。迫る衆院選で政策のバラバラ感が出ては戦えないのは明らかだ。

 連立を組む公明党との政策立案作業はさらに難しさを伴う。組閣に先立ち、岸田氏と公明党の山口那津男代表は、新型コロナ対策の強化などを盛り込んだ連立政権の合意文書を確認し、署名した。

 だが、あくまでも衆院選を念頭に連立政権の方向性を示した内容にとどまっている。憲法改正や敵基地攻撃能力の問題、対中国非難決議の扱いなど、これから具体的に詰めるべき内容は多い。

 信頼の基は公約実現

 岸田首相は国民の政治不信に危機感を持ち「わが国の民主主義を守る」と語った。公約の実現こそ政治信頼の基であることを忘れてはならない。