名前は「鮭魚」で寿司食いねぇー台湾から


地球だより

 日本では恥をかくことを「名を汚す」と表現する。「家名」などというやや古めかしい言葉もある。「名前」というものを尊重し、大切にしていることの表れだろう。

 先日、台湾では改名をめぐる社会問題が起きた。発端は、台湾に進出している日本の回転寿司チェーン店のキャンペーンである。いくつかの割引条件の中に「名前に鮭魚(サーモン)の文字が入っている人は同行者も含めて無料」というのがあった。

 当然ながら「鮭魚」などという名前の人はいないだろうから、企業側もジョークのつもりだったのだろう。

 ところが、である。名前を「鮭魚」に改名する人が現れた。台湾では「姓名条例」により、人生のうち3回まで、ほぼ無条件で名前の変更が認められる。この制度を逆手に取ってわざわざ改名する人が続出し、最終的に302人にのぼったという。

 政府も「改名は慎重に」と注意喚起を促したが、大方の台湾人はこの現象をあきれた目で見ていたようだ。

 なぜそれほど簡単に改名できる制度が存在するのか。おそらく台湾社会の日常に占いや風水が深く入り込んでいることと関係があるのだろう。姓名判断によって子供の名前を決め、進学や結婚といった人生の節目ごとの選択も占いで決めるというお国柄だ。運勢を変える目的で改名する、という人も少なくない。

 名前を変えることで運気が向上し、豊かな人生になるのであれば良い制度だと言えなくもない。願わくば、食い気に走って「名を汚す」ことのないようにしてほしいものだ。

(H)