欧州、変異株との戦い本格化 仏など再ロックダウン
独は再度「緊急ブレーキ」か
フランスは新型コロナウイルスの感染第3波懸念から16の県でロックダウンの実施に踏み切った。前回に比べ限定的ロックダウンだが、英変異株の急速な感染拡大を抑え込めるかが最大の課題だ。コロナとの一年間の戦いの経験を生かした規制や、ワクチン接種が功を奏すか注目される。
(パリ・安倍雅信)
フランスのコロナ新規感染者数は先週18日、一日3万人を大きく上回り、昨年11月以来最多となった。主な原因は英変異株の急速な感染拡大によるもので、カステックス仏首相は「第3波が懸念される」として、20日から4週間をめどに昨年3月以来、3度目のロックダウン(都市封鎖)に踏み切った
政府は今年に入り、何度も経済活動に深刻な影響を与えるロックダウンだけは避けたいとして、感染が深刻な地域限定で夜間外出禁止令で対応してきた。だが、昨年暮れから毎日の新規感染者が2万人前後で推移し、下げ止まらず、3月10日からは上昇に転じたことで、北西部ダンケルクや南東部ニースなど地域限定の週末のロックダウンを実施した。
それでも効果がないとの結論に達し、パリ首都圏を含む16の県でロックダウンに踏み切った。ただ、過去の経験を踏まえ、規制は緩やかなもので、散歩、運動のための外出は証明書を所持すれば時間は無制限、距離は住居から10キロ以内で移動ができ、対象の16県では幼稚園、小学校、中学校まではこれまで通り通学でき、対面授業が行われる。
ただ、16県に関しては地域圏を越える移動は禁止され、移動が可能となるのは、職務遂行の必要がある場合で証明書の携帯が必要となった。
カステックス首相は19日、第3波の到来がより鮮明になりつつあるとし、現段階で感染者の一人が4分ごとに集中治療室(ICU)に入れられている計算だと危機感を表した。さらに新規感染者のうち4分の3が英国で見つかった変異株が原因であることを明かした。英変異株は感染力が強いだけでなく、重症化率も高いとされている。
パリ首都圏のイルドフランスでは、10万人当たりの感染者が400人の水準に近づいており、病床の逼迫(ひっぱく)が懸念され、重症者を首都圏以外の病院に搬送する事例も出ている。夜間外出禁止措置に加え、地域限定で週末のロックダウンを実施してきたが効果は出ておらず、最低の経済活動を維持しながらもロックダウンに踏み切った形だ。
フランスでは18日時点で約560万人が第1回目の接種を終えた。最も感染者の多い高齢者施設では入所者及びスタッフのほぼ全員、65歳以上の45%が第1回目の接種を終えている。しかし、英国などに比べ、欧州連合(EU)ではワクチン供給に苦戦しており、接種に時間がかかっている。
フランスを含むEU主要国は、英製薬大手アストラゼネカ製の新型コロナウイルスワクチンの接種者に血栓が見つかったとして、一時的に接種を見合わせたが、欧州医薬品庁(EMA)が安全との判断を下し、接種を再開した。ただし、仏保健当局は19日、対象を55歳以上に限定するよう推奨している。
一方、ポーランドも20日からロックダウンを導入した。ポーランドでは、日常生活に必須ではない店舗、ホテル、文化施設、スポーツ施設が3週間閉鎖された。同国では11月以来、直近の新規感染者数が最も高い状態にある。
ドイツでも国立ロベルト・コッホ研究所(RKI)が19日、同国における新型コロナウイルスの新規感染者が「明らかに指数関数的に」増えてきていると指摘し、メルケル独首相は、国が再度「緊急ブレーキ」を適用し、封鎖措置を課す可能性が高いと警告している。
イタリアでは先月中旬から英変異株による感染が全体に占める割合が半数を超え、ドラギ伊首相は今月12日「感染の新たな波に直面している」と述べた。感染者の増加が最も深刻な地域を「レッドゾーン」に新たに指定し、規制を強化している。
欧州では、春の最大のイベントである復活祭休暇までに感染を抑え込みたいところだが、見通しは厳しい。