経済復活に賭けるトランプ氏
感染対応、人種問題で逆風
11月の米大統領選で再選を目指す共和党のトランプ大統領(74)は20日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け中断していた選挙集会を再開し、民主党のバイデン前副大統領(77)との対決に向けた選挙活動を本格化させる。投票日まで約4カ月半となる中、今後の選挙戦を展望する。
(ワシントン・山崎洋介)
「偉大な米国の復活が始まった」
トランプ選対が7日、発表した30秒のCMは、この明るい未来を告げる宣言で始まる。新型コロナによる感染拡大へのトランプ政権の対応には触れず、経済再生への希望を前面に出しており、今後の再選戦略を予告するものだった。
営業を再開した店舗や稼働する自動車工場の映像を流しつつ、「パンデミックの前に、トランプ大統領はわれわれの経済を世界の羨望(せんぼう)の的にした。それを再び実現させる」とナレーションは誓う。
11万人を超える犠牲者を出した新型コロナウイルスや人種差別デモへの対応をめぐり、批判を浴びるなど、再選に向けトランプ氏は逆風にさらされている。
政治専門サイト「リアル・クリア・ポリティクス」が集計した最新の世論調査平均値では、トランプ氏が41・3%だったのに対しバイデン氏は50・1%で、8ポイント以上のリードを許している。勝利を分ける六つの激戦州の世論調査でも、おおむねバイデン氏の後塵(こうじん)を拝している。
厳しい情勢の中、トランプ氏にとって数少ない前向きな分野が経済だ。CNNの世論調査によると、経済政策について、トランプ氏の方がうまく対処できると答えた人が51%だったのに対し、バイデン氏は46%だった。
この強みを生かし、トランプ氏は自らを新型コロナによる国家の危機を乗り越え、米国を再生へと導く立役者として印象付けたい考えだ。このため、経済についての肯定的なニュースは、最大限にアピールしている。
5月の失業率が予想外に好転し13・3%になったことが発表された5日には、急遽(きゅうきょ)ホワイトハウスで会見を開き、多くの専門家が20%近い失業率を予測していたことについて「史上最大の誤算」だったと揶揄(やゆ)。さらに「V字回復というよりも、ロケット船だ!」などといつにも増して大げさな表現で、経済の復調を誇示した。
第2次世界大戦後、2期目の大統領選挙に臨んだ現職のうち敗れたのはフォード、カーター、ブッシュ(父)の3氏だが、いずれも当時、景気不振に見舞われていた。トランプ氏としては、少なくとも投票日の前までに経済を回復基調に乗せることが欠かせない。
しかし、夏から秋にかけて新型コロナの感染第2波が来る可能性がある。感染が大幅に拡大すれば、経済活動が再び停滞する恐れがある。
一方、バイデン氏は新型コロナへのトランプ氏の対応に焦点を当てたい考えだ。激戦州のペンシルベニア州で17日に開かれた会合で演説し、経済重視のトランプ氏について、新型コロナとの戦いを放棄し「白旗を振って撤退した」と非難。さらに、トランプ氏は新型コロナへの対応で「リーダーシップの基本的なテストに失敗した」とこき下ろした。
新型コロナの収束への見通しが不透明な状況の中、トランプ氏は経済再開に舵(かじ)を切るという賭けに出た。感染拡大を一定程度に抑えつつ、経済回復への道筋をつけられるかが選挙戦を左右することになりそうだ。