米大統領選 危機感強めるキリスト教保守派

同性婚で脅かされる信教の自由

 米共和党の主要な支持基盤であるキリスト教保守派の年次集会「バリューズ・ボーター・サミット」が25日から3日間、ワシントン市内で開催された。同性婚の合法化で信教の自由が脅かされていることへの危機感を背景に、2016年大統領選でキリスト教保守派の存在感が再び高まりそうな気配だ。(ワシントン・早川俊行、写真も)

800

9月25日、ワシントン市内で開催されたキリスト教保守派の年次集会「バリューズ・ボーター・サミット」で演説する米共和党のテッド・クルーズ上院議員

 「我々の自由で最も攻撃を受けているのは信教の自由だ。傍観者でいられる時代は終わったのだ」

 今年で10回目となる同サミットは、主催団体「家庭調査協議会」のトニー・パーキンス会長の危機感に満ちた言葉で幕を開けた。

 背景には、近年、結婚を男女間のものと信じるキリスト教徒が同性愛者を差別したと糾弾され、社会的制裁を受ける事例が相次いでいることがある。さらに、6月の連邦最高裁判決で同性婚が全米50州で合法化されたことで、「宗教迫害」は一段と深刻化するのは確実な情勢だ。

 サミットには、自らの名前で同性カップルに結婚証明書を発行することを拒否し収監されたケンタッキー州ロワン郡のキム・デービス書記官や、同性婚のウエディングケーキ作りを断ったことでオレゴン州当局から13万5000㌦(約1600万円)の罰金支払いを命じられたクライン夫妻ら、実際に「迫害」に直面するキリスト教徒たちが出席した。

 保守派法曹団体「リバティー・インスティテュート」のジェフ・マティア弁護士によると、最高裁判決後、信教の自由をめぐり法律支援を求める問い合わせが4倍に増えたという。マティア氏はサミット参加者に対し、「あなたがたの信教の自由が攻撃されるのは時間の問題だ」と警告した。

 米人口の4分の1を占める福音派を中心とするキリスト教保守派は、大統領選の行方を左右する一大勢力で、2000、04年大統領選ではブッシュ前大統領勝利の原動力となった。だが、08、12年大統領選では党エリート層が推す穏健派が共和党候補になったことで集票力が大幅に低下し、同派の政治的影響力は以前より薄れていた。

 だが、最高裁判決を受け、キリスト教保守派は伝統的価値観や信教の自由を擁護する強力な保守派大統領を誕生させなければならないと危機感を募らせており、存在感を取り戻す可能性がある。

 サミットでは8人の共和党大統領候補が演説し、テッド・クルーズ上院議員は「大統領に選ばれたら、就任初日に政府機関に指示して宗教迫害を終わらせる」と宣言。ボビー・ジンダル・ルイジアナ州知事は「米国が信教の自由をつくったのではない。信教の自由が米国をつくったのだ」と主張した。同党で支持率トップに立つ不動産王ドナルド・トランプ氏も登壇した。

 参加者による模擬投票では、得票率35%のクルーズ氏が3年連続で1位を獲得。2位は18%の元神経外科医ベン・カーソン氏、3位は14%のマイク・ハッカビー元アーカンソー州知事、トランプ氏は5%で5位だった。一方、穏健派のジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事は1%にとどまり、草の根保守層から毛嫌いされていることが改めて浮き彫りになった。

 今回のサミットには、過去2番目に多い約2700人が参加。パーキンス氏は本紙の質問に、例年以上の盛り上がりを見せたのは、「信教の自由が攻撃されていることへの不安と切迫感の表れだ」と語った。