プーチン大統領、米大統領と会談 クリミア編入後で初
ロシアによるウクライナのクリミア編入後、初となる米露首脳の会談が6日、ノルマンディー上陸70年記念式典に合わせて行われた。プーチン大統領と、ウクライナのポロシェンコ新大統領との初の会談も実現した。もっとも、クリミア編入の既成事実化を狙うロシアに両首脳は強く反発しており、プーチン大統領の思惑通りに欧米との関係改善が進むとは限らない。(モスクワ支局)
ウクライナはポーランドなどと合同旅団編成
ロシア知識層が中国傾斜を批判
第2次世界大戦のノルマンディー上陸作戦から70年を記念した式典が6日、同地で行われた。旧連合国や旧敵国ドイツの首脳らが出席するこの式典で、ロシアによるクリミア編入後で初めてとなるプーチン大統領とオバマ米大統領の会談が実現するかどうか、さまざまな憶測を呼んでいた。
プーチン大統領とオバマ大統領の非公式な会談は、出席者による昼食会の時に、10分から15分間行われた。会談の詳細は公式には発表されていないが、ロシア側によるとオバマ大統領は、ウクライナをめぐる緊張緩和の前提として、①ウクライナのポロシェンコ新大統領の正統性を承認する②ウクライナ東部の親露派分離主義者に対する支援、武器・弾薬などの提供を停止する、の2点をプーチン大統領に提示した。
米露首脳会談に先立ち、昼食会の直前、プーチン大統領はポロシェンコ大統領とも約15分間、非公式な会談を行った。ウクライナ危機の同国経済への影響について意見を交わしたほか、問題の解決は平和的な政治的対話によってのみ可能との認識で一致した。
オバマ大統領は、緊張緩和の前提の一つとして、ポロシェンコ大統領の正統性をロシアが承認することを示したが、ロシアの専門家らは、プーチン大統領とポロシェンコ大統領の会談が行われたこと自体が「正統性の承認」だと評価している。
プーチン大統領はノルマンディー上陸作戦記念式典に先立ち、対ウクライナ国境からロシア軍部隊の多くを撤収させるなど緊張緩和ムードを作り上げ、クリミア編入を既成事実化したままでの欧米やウクライナとの関係改善に向けた駆け引きを強めている。
もっとも、ロシアのクリミア編入に対する米国やウクライナの反発は強い。
オバマ大統領は4日、ポーランド・ワルシャワでポロシェンコ大統領と会談し、経済的支援に加え、ウクライナの治安部隊や軍の訓練を支援すると表明。さらに、暗視ゴーグルなど武器を除く装備品を治安部隊や軍に提供することを約束した。
さらに、ウクライナのコヴァリ暫定国防相は4日、北大西洋条約機構(NATO)加盟国であるポーランドとリトアニアとともに、ウクライナが合同旅団を編成すると発表した。合同旅団の一部はウクライナ西部のリヴィウに駐屯する。詳細は明らかになっていないが、NATOに加盟する2カ国とウクライナが合同で軍部隊を編成することは、ロシアの神経を逆なでするものだ。
ロシア、ウクライナ、欧州安保協力機構(OSCE)は9日、ポロシェンコ大統領が提案した東部の緊張緩和プランを実行に移すことで合意した。ウクライナ東部ドネツク、ルガンスク両州の親露派勢力の後ろ盾であるロシアがポロシェンコ大統領の提案に同意したことは、停戦に向けて一歩前進した形だ。しかし、プーチン大統領が「ウクライナの危機を打開するには、東部と暫定政権の純粋な対話が鍵」との見解を示しいるものの、ポロシェンコ政権と親露派勢力の戦闘はさらに激化しつつある。
ロシア国内に目を向けると、クリミア編入時に見せた国民の熱狂は次第に過ぎ去り、ウクライナとの関係改善を求める見方が強まりつつある。以前の世論調査では、約6割がドネツク、ルガンスクへのロシア軍投入に賛成していたが、6月初めの調査では、賛成は約2割まで減少した。特に、欧米との関係悪化を受けたロシアが、天然ガス供給の大型契約を締結するなど中国との関係拡大に動いたことに、知識層が強く反発している。
ブリュッセルで4、5両日に行われたG7サミットは、ロシアを非難する宣言を採択し、対露追加制裁を検討する姿勢を示した。ロシア経済は停滞しており、欧米の制裁はロシア経済にじわじわと影響を与えることになる。プーチン政権はクリミア編入の既成事実化と、ウクライナ東部への影響力確保を狙い駆け引きを続けているが、同時に欧米との関係改善も図る必要に迫られている。