進展するクリミアのロシア化
ウクライナ連邦制導入を画策
ウクライナのクリミア自治共和国を編入したロシアは、クリミアのロシア化を着実に進める一方で、ウクライナへの連邦制導入を画策している。ウクライナを東西に分ける連邦制導入により、ロシア系住民の多い同国東部への影響力を確保する構えだ。(モスクワ支局)
経済制裁もプーチン支持衰えず
ウクライナ政府は15日、軍や特殊部隊を投入し、東部のドネツク州などで軍用空港や警察施設などを占拠する親ロシア系武装集団の強制排除を開始した。先にトゥルチノフ大統領代行が警告した投降期限を過ぎても占拠が続いていたことを受けた措置だ。
クラマトルスクの軍用空港では、ウクライナ軍特殊部隊がヘリや装甲車で急襲し、立てこもる親ロシア系武装集団と銃撃戦の末、空港を奪還した。ロシアのメディアによると、この銃撃戦で武装集団側に4人から11人の死者が出た。
特殊部隊は対テロ作戦を継続し、警察施設が占拠されたスラビャンスクにも装甲車など約500人の部隊を投入した。
ウクライナ東部のロシア国境に近いドネツク州、ルガンスク州などでは、親ロシア派の住民が自治権の拡大や連邦制導入などを要求し州政府庁舎などを占拠し続けている。軍用空港や交通の要衝にあるスラビャンスクを掌握し、部隊を展開することで、占拠を続けるロシア系住民に圧力を掛ける構えだ。
連邦制導入などを要求する住民の背後には、ロシア政府の意向があるというのがウクライナ暫定政府側の見方だ。事実、ロシアのラブロフ外相は「ウクライナの統一と安定を保つには連邦制を導入するしかない」と述べている。
クリミア編入などで親欧米派のウクライナ暫定政権がロシアと決定的に対立し、急速に欧米への接近を進めている。ロシアが影響力を確保するためには、ウクライナに連邦制を導入し、ロシア系住民の多い東部地域を一つの連邦構成主体とし自治権を拡大させ、キエフの中央政府を牽制(けんせい)するしかない。
また、ウクライナを不安定化させ、5月25日の大統領選を阻止することで、親欧米派を揺さぶることも有力な手段となる。トゥルチノフ大統領代行は「ロシアの狙いは大統領選を阻止し、国家を分裂させることにある」として、東部の親ロシア派住民を扇動しているとロシアを強く非難した。
ウクライナ東部のロシア編入については、クリミア編入の大義名分とした「多くの住民の支持」は存在せず、また、欧米などとの更(さら)なる対立を招くことなどから、プーチン大統領は選択しないとの見方が強い。
一方、ロシアが編入したクリミアでは、急速な「ロシア化」が進んでいる。4月11日に発効した新憲法は、「クリミア共和国はロシア内の民主法治国家である、その領土はロシア連邦の領土と不可分一体のものである」と規定した。また、セバストーポリ市に、モスクワ市やサンクトペテルブルク市と並び連邦構成主体の地位を与えたとする。公用語にはロシア語、ウクライナ語とともにクリミアタタール語を加え、クリミアのロシア編入に反対したタタール人を懐柔する構えだ。
クリミア編入を受け欧米各国から経済制裁を受けるロシアでは、輸入品を中心に物価が上がり続けており、低所得層を中心に影響を与えつつある。もっとも、欧米の批判をものともせずクリミア編入を強行したプーチン大統領に溜飲(りゅういん)を下げる国民は多く、大統領への支持は極めて強い。











