「植物肉」の効用
中国の梁(南朝)の初代皇帝、武帝(464~549年)は仏教に対する信心が最も篤実な皇帝だった。「肉食をすると慈悲心の種が途絶えるようになる」という涅槃経の一節を聞いて、4回も仏教界に対し酒と肉食を禁止するとの詔勅を下した。中国の仏教界に肉食禁止の戒律が生まれた背景にはこのような事実がある。
とはいえ、肉食禁止は仏教界の基本的な戒律ではなかった。南方仏教やチベット仏教ではいまだに肉食を禁じていないことを見ても分かるはずだ。必要は発明の母だというが、肉を食べられなくなった僧侶と信徒たちは苦心の末に代替食品を開発した。
その中の一つが大豆から抽出されたタンパク質を固めて作った大豆ミートだった。植物性の肉(「植物肉」)革命の始まりだった。日本でも大豆ミート文化がいち早く伝わり、豆腐でうなぎのかば焼きを真似(まね)た「精進うなぎ」料理が生まれた。北朝鮮では1990年代に経済難が深刻になると、油を搾って残った大豆かすを活用して大豆ミートを作って食べ始めた。いわゆる人造肉だ。普通、人造肉の中にご飯を入れて、薬味で味付けして食べるが、それが脱北者たちの代表的な故郷料理となっている。
「植物肉」の利点は一つや二つではない。コレステロールや飽和脂肪酸がなく、循環器疾患の予防に役立つという。繊維質とビタミン、ミネラルが豊富に入っており、栄養価も優れている。消化時間が肉よりも短く、胃腸に負担が少ないことも、もう一つの長所だ。
植物肉市場が米国で急速に拡大している。先月、バーガーキングが植物肉ハンバーガーの販売地域を米国全域に拡大したのに続いて、KFCも植物肉チキンの試験販売に突入した。昨年、119億㌦だった全世界の植物肉市場は、2025年には212億㌦に成長する見通しだ。
(完全)菜食主義者(Vegan、ビーガン)に経済学(economics、エコノミクス)を合わせた新造語“ビーガノミクス”は既にビジネス用語として定着した。牛が口と肛門から出す二酸化炭素とメタンは代表的な温室効果ガスだ。温室効果ガス全体の14・5%が畜産業で発生する。植物肉の消費が増えると家畜の飼育が減ってそれだけ温室ガスの発生が減少するはずだ。残忍な屠畜に関する論争も減る可能性がある。植物肉が環境保護と動物圏拡大に寄与する孝行息子になっている。
(9月10日付)
※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。