北最高人民会議、一向に見えない非核化意志
北朝鮮の国会に相当する最高人民会議の第14期第1回会議が首都平壌で2日間にわたり行われた。金正恩朝鮮労働党委員長の施政方針演説や人事発表などがあったが、最後まで非核化の意志は確認できなかった。仮にこのまま3回目の米朝首脳会談を実施しても非核化で成果が出るか極めて疑わしい。
米の要求「実現不可能」
正恩氏は演説で、先々月ベトナム・ハノイで行われた2回目の米朝首脳会談に言及した。米国の要求は「全く実現不可能」だったとし、「ハノイ会談の再現は喜ばしくないし、やる意欲もない」と述べた。
この時、トランプ米大統領は寧辺核施設だけでなく他のウラン濃縮施設やミサイル基地などの全廃を求め、正恩氏としては想定外だったこれらの措置を受け入れられなかったとされる。
要するに北朝鮮は、段階的非核化の見返りに制裁の大幅緩和を引き出そうという従来の戦術を変えるつもりはないのだろう。
正恩氏は3回目会談に応じる考えを示したが、それについても「正しい姿勢でわれわれが共有できる方法を探すという条件」を掲げた。そして会談で合意文に署名できるか否かは「全面的に米国の姿勢にかかっている」と米国を牽制(けんせい)している。
昨年から北朝鮮ペースで進んできた米朝対話はハノイ会談が決裂したことでひとまず仕切り直しされた。これを境に米国が一貫して北朝鮮に非核化で厳しい基準を求め、それをクリアしなければ制裁緩和には応じないという断固たる姿勢を取ることが期待された。
ところが、北朝鮮は今回再び曖昧な非核化措置で制裁緩和を引き出す戦術で米国を揺さぶり、トランプ氏は早くも3回目会談への意欲を口にしている。
この状況で3回目会談が行われても、北朝鮮が真摯(しんし)に非核化に取り組むか、またしても確認できない恐れがある。非核化の具体的中身を曖昧にさせたまま共同声明に署名した昨年6月のシンガポール会談の二の舞いになるか、さもなければ北朝鮮が米国の厳しい要求に反発して決裂したハノイ会談の再現になるかのいずれかだ。
今回の人事で新設された国務委員会第1副委員長に選出された正恩氏の側近、崔竜海氏は会議で演説し、正恩氏を「わが共和国の平和を守護する宝剣を備え、世界的な軍事強国にした」と称賛した。核保有をアピールしたもので、これも非核化意志がないことの証左だ。
トランプ氏は来年になると再選をかけた大統領選の準備で北朝鮮問題に対応する余裕がなくなる。これを見越したかのように正恩氏は今回、「今年末まで米の英断を待つ」と米国に年内譲歩を促した。再選へ外交実績が欲しいトランプ氏が、また北朝鮮非核化の中身を詰め切れないまま米朝会談に応じる失敗を繰り返しはしまいか。心配だ。
韓国も信頼回復せよ
今回、正恩氏は韓国の文在寅政権にこれまで以上に北朝鮮を擁護するよう要求した。既に文政権には北朝鮮の意向に沿って米朝の仲介をしているという懸念がつきまとっている。韓国も北朝鮮非核化に向け自身の信頼回復が問われている。