「北核開発継続」、米朝会談前に深刻な事態


 北朝鮮に対する制裁履行状況を点検する国連安全保障理事会の専門家パネルが、来月公表予定の最終報告書案の中で「北朝鮮は核・ミサイル開発を継続中」と指摘していることが明らかになった。今月末にも開催が見込まれる2回目の米朝首脳会談を目前にし、北朝鮮が米国や韓国に約束した非核化とは逆行する動きをしていた実態が改めて浮き彫りになった形だ。深刻な事態である。

寧辺施設稼働を確認

 報告書案で最も注目されるのは、寧辺にある核関連施設をはじめ北朝鮮で核開発のさまざまな兆候が確認されたと指摘している点だ。

 昨年2月から11月までの衛星画像の分析からは新たな水路掘削工事がなされ、5メガワット黒鉛減速炉付近で新しい建物が建設されたことが分かったという。

 また加盟国からの情報として、昨年9~10月に黒鉛減速炉の稼働が停止し、使用済み核燃料棒が取り出された可能性を指摘。使用済み核燃料棒からプルトニウムを抽出する再処理を行う「放射化学研究所」では昨年4~5月に煙が上がっていることが確認され、これについてメンテナンス作業の可能性が高いと説明している。

 さらに報告書案は、北朝鮮が北部の国境付近で大陸間弾道ミサイル(ICBM)基地を建設しているとし、核・ミサイル施設が廃棄された場合に備え、民間の工場や非軍事施設を繰り返し利用していることも指摘している。

 北朝鮮は昨年4月から9月にかけ米国と1回、韓国とは3回の首脳会談を行い、いずれにおいても非核化に向け努力することを約束した。だが、今回の報告書案で北朝鮮がこれらを前後し核・ミサイル開発を続行させていたことが判明した。

 本気で非核化するつもりであれば関連施設の拡張や補修には手を出さないはずだ。非核化交渉に臨むにはあまりにも不誠実な態度だと言わざるを得ない。

 北朝鮮は昨年9月の南北首脳会談で、寧辺の核施設について米国による「相応の措置」があれば「永久的に廃棄」するとまで約束していた。しかし、実際には同施設を稼働させていたわけだ。

 これ以外にも平壌郊外のウラン濃縮施設が稼働中だという。北朝鮮全土には隠蔽(いんぺい)された関連施設が多数あるといわれ、核開発の全容解明が必要だ。

 報告書案は、国連決議で禁止されている漁業権の移転が中国漁船に対し行われていることや海上で積み荷を移し替える「瀬取り」によって石油製品を密輸する違反を繰り返していることなどにも言及している。ほつれ始めた対北制裁網を再び締め直し、北朝鮮が非核化に踏み出すまで圧力をかけ続けることが不可欠だ。

北の術中にはまるな

 米朝首脳再会談では、トランプ米大統領がこうした北朝鮮の実態を問題視し、米国による見返りが先行されなければ非核化には応じられないという北朝鮮の論理に巻き込まれないことが重要だ。単に核実験やミサイル発射がストップしていることに満足していては、またしても北朝鮮の術中にはまりかねない。