慰安婦財団取り消し、歯止めなき韓国の日本軽視
韓国は日本との関係をどこまで軽視するつもりなのか。いわゆる従軍慰安婦問題をめぐる日韓両政府間の合意に基づき設立された韓国の「和解・癒やし財団」について、韓国政府が法人設立認可を取り消したと明らかにした。
約2カ月前に韓国が財団解散を発表した際、日本政府はこれに強く抗議し、日韓合意の履行を繰り返し求めてきた。だが結局、韓国は日本の要請を無視し解散手続きに踏み切った。
合意も財団も「積弊」
これまで韓国・文在寅政権は、日韓合意と財団について元慰安婦たちの事前了承を得ていなかったことを最大の問題点として挙げてきた。ただ、事前了承は得なかったにせよ、合意後、当時の朴槿恵政権で元慰安婦たちに対する釈明や説明が行われたのも事実だ。
その結果、合意に基づき日本が拠出した10億円を財源に、合意当時生存していた元慰安婦47人のうち7割以上の34人が、本人が納得した上で1人当たり約1000万円の癒やし金を受け取っている。
日韓合意の破棄と財団解散を声高に叫び続けている韓国の市民団体はいまだに日本に公式謝罪を要求しているが、日韓双方の外相が合意締結時に共同記者発表文を読み上げた際、日本側の内容には安倍晋三首相による「心からのおわびと反省の気持ち」が盛り込まれた。
日韓合意と財団の活動にはそれ相応の成果があったと評価するのが自然だろう。ところが文政権は「目的以外の事業を行ったり公益を害する行為をした」時に認可を取り消せるとした民法を根拠に財団の設立認可を取り消してしまった。
文政権は国際社会でイメージダウンにつながる合意の破棄や再交渉は否定しながらも、事実上の合意破棄である財団解散を進めるつもりらしい。
そもそも文政権にとって成果があったか否かを客観的に判断することは重要ではないのかもしれない。政敵であった朴前政権を「積弊」と批判し、その政権での合意と合意に基づく活動まで「積弊」と決め付けて清算する政治的目的を最優先させているとしか思えない。
慰安婦問題ではその傾向がさらに強まるようだ。女性の人権問題を前面に出し、被害者に寄り添うことは、特に韓国社会では世論の政権支持につながりやすい。安全保障面での協力に影を落とすことが憂慮されるにもかかわらず、それに対する配慮があるとは思えないほど日本軽視に歯止めをかける気配はない。レーダー照射問題をめぐりエスカレートした日韓の応酬の背景には、こうした文政権の対日姿勢もあるだろう。
財団の設立認可取り消しが発表された日、元慰安婦で日韓合意反対運動の象徴的存在だった金福童さんが死去した。文大統領は自ら弔問に訪れ、金さんの生き方を称(たた)えた。合意がさらに踏みにじられたようで残念だ。
来月は独立運動100年
日本統治下で起きた独立運動から100年を記念する行事が来月予定されており、反日路線はしばらく続きそうだ。関係修復にはまず韓国に事態収拾に向け動いてもらうしかない。