“韓半島の春”の春らしくない理由
北の変化なければ危機は高潮
11月の朝米高官級会談が失敗に終わった後、金正恩朝鮮労働党委員長のソウル訪問と第2回朝米首脳会談に集まった韓国の関心と期待は“希望拷問”(できないと分かっているのに希望を持たせ続けて辛い思いにさせること)に近かった。4月から9月まで3回の南北首脳会談と6月の朝米首脳会談で北朝鮮が見せた非核化の意思が必ず結実しなければならないという切実さがそれだけ大きかったためだ。
米朝が互いに譲歩を要求する膠着(こうちゃく)局面にあっても、来年初めに突破口が開けると希望をかけてはみたが、久しぶりに迎えた“韓半島の春”が力を失っていく感は免れない。
北朝鮮による実質的な非核化措置の兆しはなく、米国は去る10日、崔龍海党中央委員会副委員長を含む核心幹部3人に人権蹂躙(じゅうりん)の責任を問うて制裁対象にした。トランプ米大統領は14日、ツイッターで米国が北朝鮮との交渉を急ぐ必要はないと余裕を見せ、米国務省のスティーブン・ビーガン北朝鮮担当特別代表は19日、「最終的で完全に検証された北朝鮮の非核化」(FFVD)に向けた韓米の調整を強化すると表明した。いつでも危機が再燃する雰囲気だ。
2017年の一触即発の危機的状況と比べると、今年1年間の韓半島は平和の雰囲気醸成という貴重な成果を挙げた。全体的に見れば南北と米中の全てに利益となったいわゆるポジティブサムゲームだった。
しかし、北朝鮮の戦略が持つ限界も明確だ。核を放棄すれば誰も北の存立を脅かさず、経済発展の契機を確保できることを北朝鮮が分からないはずがない。だが、既得権層の体制擁護と住民統制を基盤とした全体主義体制を維持するためには“適当水準の緊張”と“敵”が必要で、核は相変らず役立つ。核を捨てようとすれば体制維持が難しく、大っぴらに核開発を継続すれば米国の軍事行動が恐ろしい。
米国は北が実質的な非核化措置を取らない限り、経済制裁を解除せず、人権問題などで圧力を強化するという方針だ。
北朝鮮は“核の緊張”に依存して人権不在の全体主義体制を固守し、米中間の戦略的競争が激化する現実の限界こそが“韓半島の春”の春らしくない理由だ。問題を引き起こした北朝鮮が自ら変化しなければ、いつでも韓半島の危機は高潮する。これは韓国の仲裁努力の不足ではなく、韓半島の地政学的な現実に起因した困難だ。
性急に“運転者”役に乗り出すよりも、今はまだ効率的な危機管理による北朝鮮リスクの最小化に力を尽くす時だ。北朝鮮が核を放棄し、経済発展の道に進むよう忍耐をもって誘導する毅然(きぜん)さが必要だ。早急さによる“希望拷問”で自分を苦しめてはならない。
(呉承烈(オスンニョル)韓国外国語大教授・国際地域学、12月21日付)
※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。