“出産のメッカ”の危機
「大病院は絶対に滅びない」という医療界の“大馬不死”公式に亀裂が入るのだろうか。
「国内の第1号女性専門病院」として“出産のメッカ”という名声を保有していた第一病院が開院55年目に廃院の危機に陥っている。1963年12月に開院して以来、約25万人の新生児が生まれた第一病院が低出産の余波などに打ち勝てず、今月1日に300病床の入院室を閉鎖した。応急の妊産婦だけ診療する程度に分娩室を縮小して運営中だという。分娩と婦人科疾患の分野で大学病院に匹敵する病院が深刻な経営危機に見舞われたわけだ。
ソウル市中区墨井洞に位置する第一病院の創設者は故李秉喆サムスングループ創業者の甥だ。2000年代初期だけを見ても分娩件数で不動の全国1位で、大韓民国の新生児の2%が生まれる場所だった。映画俳優の金芝美、李英愛、高賢廷など当代最高の芸能界のスターたちが出産のためこの病院を選んだ。李在鎔サムスングループ副会長など、サムスン創業家の3~4世の相当数がここで生まれた。新年を迎えると、最も早く生まれた赤ちゃんを撮影するために全国の(スチール・ビデオ)カメラ記者たちが集まり、大混雑したりもした。
第一病院は1996年にサムスングループに編入され、2005年まで「三星第一病院」と呼ばれたが、05年にサムスングループから分離された後に経営事情が悪化した。07年から行われた病院の建物のリモデリングと同時に、女性癌(がん)センターや健康検診センターなどを設立するため、10年間で総負債が4倍に増えた。その半面、分娩件数は12年の6808件から昨年は4202件と、5年の間に38%も縮小した。病院側が今年5月、“給与削減”という超強気の対策を発表すると、労組はストライキに突入。この過程で“看板スター”格の医者や看護師たちが(他の病院に)移籍すると患者も一緒に病院を移した。
第一病院は現在、売りに出ているが、労組が財団理事長を背任容疑で告発し、病院の自力による再起は容易(たやす)くないとの展望が優勢となっている。経営陣は買収を希望する2,3カ所と接触中だと言われている。韓国の代表的な“出産のメッカ”の廃院危機は低出産の危機をいっそう深刻にさせている。たとえオーナーが代わっても第一病院の“ブランドパワー”は続いてもらいたいのだが。
(11月6日付)
※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。