急変する経済環境と危機不感症


韓国紙セゲイルボ

政府は山積する懸案解決を

 国際経済と金融市場に乱気流が起こっている。米国発の経済制裁でトルコ経済がふらつき、アルゼンチンなど新興国市場も国家破綻の暗い影が垂れている。数カ月の間、それこそ国際経済と金融市場は友軍と敵軍を分けるのが難しい戦場と化した。

 昨今、ドナルド・トランプ米大統領が振り回す経済制裁と保護主義の腕力に経済が脆弱(ぜいじゃく)な新興国は瀕死(ひんし)状態に追い込まれている。米国と中国間の対立も貿易紛争を超えて、経済覇権戦争に膨らんでいる。外圧に脆弱な韓国経済もその暴風にいつ巻きこまれるか分からない。新興国の通貨暴落が韓国経済の脆弱な輪を壊し、金融・経済危機を引き起こすこともあり得る。1997年のアジア通貨危機で韓国は国家破綻事態に直面した。

 経済の根幹である韓国産業の競争力も日に日に衰退している。半導体を除いた大部分の主力産業が苦戦を免れない。一時、世界市場を席巻した造船・海運は相変らず長期不況の泥沼でさまよっており、携帯電話と液晶表示装置(LCD)等、主要電子部門も中国に追い越されて久しい。自動車の海外販売も悪化している。

 問題の深刻性は国内外の環境がこのように急変しているにもかかわらず、国内に危機不感症が蔓延(まんえん)している点だ。政府と政界では「所得主導成長」と「革新成長論」をめぐって消耗的な論争が広がっており、反企業情緒もなかなかなくならない。

 企業は萎縮し、競争力回復の原動力である企業家精神は失われて久しい。今年の企業の設備投資が1997年通貨危機以来、初めて5カ月連続で減ったのはその証左だ。

 時遅しの感はあるが、文在寅大統領が最近、現実路線に出ている点は幸いなことだ。文大統領は7月、医療機器規制の革新をはじめ、生活型社会間接資本(SOC)投資、銀産分離(財閥の銀行所有禁止)と個人情報規制の革新に乗り出し、政策路線と理念を超えて、経済懸案の解決に力を注ぐ姿を示した。

 文在寅政府は今こそ火急の問題を解決しなければならない。まず新興国危機の“転移”を防ぐことだ。新興国の経済、金融危機の状況に神経を尖(とが)らせ、国内の外国為替、債権など金融市場への波及を最小化して、金融会社の資産健全性など信用危険も綿密に把握しなければならない。金融市場の混乱と資本流出ショックを防ぐことにも万全を期さなければならない。企業の競争力回復と企業家精神の復興も急務だ。企業の成長なくしては雇用と家計所得の難題を解く術がないことは誰も否認できない。

 これらの懸案を解決しなければ韓国経済の未来は暗澹(あんたん)極まりない、所得主導成長と公正経済、革新成長も蜃気楼(しんきろう)にすぎないだけだ。文在寅政府が現実路線を維持することを期待する。

(チュ・チュルリョル産業部長、9月5日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。