韓国また「反日」に旋回か、来月「慰安婦の日」制定

半島融和に「歴史」好都合
独立運動100年で南北共闘計画

 韓国の文在寅政権が「反日」に舵(かじ)を切り始めた。いわゆる従軍慰安婦問題をめぐる2015年末の日韓合意で日本が拠出した10億円を予算で全額肩代わりすることを決めたのに続き、来月14日を「日本軍慰安婦被害者を称える日」(以下、「慰安婦の日」)と称し法定記念日にする予定。来年3月1日の独立運動100周年に向けては記念行事を北朝鮮と共同で行う計画が進んでいる。こうした動きに日韓未来志向を危ぶむ声も聞かれる。
(ソウル・上田勇実)

慰安婦像

ソウルの日本大使館前にある慰安婦像を囲み、韓国市民団体が主催して行った定例の反日デモ「水曜集会」(昨年7月撮影)

 女性家族省によると、韓国政府は「光復節」(日本統治からの解放日)の前日である来月14日、中部の天安(忠清南道)にある国立墓地「望郷の丘」で「慰安婦の日」制定の記念式典を行う。現在、27人生存する元慰安婦のうち比較的、健康状態が良好な数人が参加する見通しで、追悼碑の除幕式も行われるという。

 この日は1991年、元慰安婦として金学順氏が初めて名乗り出て証言をした日。「慰安婦の日」は今後、国の法定記念日として毎年行事が行われ、これまで歴代大統領が日本批判の演説をしてきた「光復節」式典と併わせ、政府が2日連続で「反日」色の濃い行事を主催することになる。

 また慰安婦問題に関する研究、調査、学術シンポジウム開催などを強化するため、来月前半に「日本軍慰安婦問題研究所(仮称)」が財団法人「韓国女性人権振興院」の中に開設される。

 鄭鉉栢女性家族相は同研究所の役割について「欧米に散在する関連資料の収集」などを挙げ、「戦時の女性人権弾圧問題で韓国がメッカにならなければならない」と語っていた。

 日韓「慰安婦」合意に基づき元慰安婦や遺族に癒し金を渡してきた「和解・癒し財団」は理事らの辞表提出で事実上、事業がストップ。合意に明記されていた同問題の「最終的かつ不可逆的な解決」はおろか、自粛するはずだった「国際社会での相互非難・批判」まで堂々と無視される恐れが出ている。

 一方、今月3日に正式発足した韓国大統領直属の「3・1運動100周年記念事業推進委員会」は、日本統治時代に起きた独立運動から来年でちょうど100年になることを記念し、これまで行ってこなかった北朝鮮との共同事業を計画している。

 同委が発刊する広報誌などによると、来年の記念事業は「南北が政府・民間の交流・協力を通じ平和から統一に向かうことを目標」にしているといい、「第二の独立宣言(当時、宗教指導者らによって朗読された宣言)となる南北3・1共同宣言文の発表を北朝鮮に提案する」ことも検討している。

 北朝鮮は独立運動を、後に指導者となる金日成主席の「主体革命」を受け入れなかった点などから「失敗」と断じてきたため、韓国との評価にはズレがある。だが、同委では現在の南北融和ムードに乗じ、「反日民族闘争として記念碑的事件だったという共通の歴史観から出発」したい考えのようだ。

 文政権は対日政策に関し、発足当初から歴史認識問題では過去を直視しつつ、現実の経済・安保分野では緊密に協力するという「ツー・トラック戦略」を口にしてきた。ただ、南北・米朝首脳会談など北朝鮮をめぐる重要日程を終え、これらを成功させるためだった日本配慮の姿勢に陰りが見え始めた。

 今年10月には小渕恵三首相と金大中大統領が発表した未来志向の「21世紀に向けた日韓パートナーシップ宣言」から20周年を迎えるが、未来志向へのきっかけをつくれるか不透明。朝鮮半島融和で状況が変わったためだ。

 陳昌洙・前世宗研究所所長はこう指摘する。

 「日本と未来志向の関係改善を進めれば日米韓の連携が強化されるが、これを嫌がる中国から嫌がらせや圧力を受けるので半島融和政策にはマイナス。だから日本との関係はうやむやにしたままがいい。文政権のブレーンにも日本との間に歴史認識問題が存在していた方が都合がいいと考えている人がいる」