ポンペオ氏訪朝、疑念拭えぬ北の非核化意志
ポンペオ米国務長官が訪朝し、先の米朝首脳会談で合意した北朝鮮の「完全な非核化」などについて詰めの協議を行った。だが、非核化の手順をめぐり双方は対立したとみられ、今後の交渉は難航が予想される。北朝鮮に非核化の意志があるのかという当初からくすぶっていた疑念がやはり拭えない。
双方の思惑に溝
ポンペオ氏は訪朝で金正恩朝鮮労働党委員長の側近である金英哲党副委員長と会談した。首脳会談で「成果」とされた北朝鮮非核化に関し、共同声明には盛り込まれなかった具体的な日程や方法を話し合うためだ。
ポンペオ氏は会談後、記者団に「ほぼ全ての主要分野で進展があった」と述べたが、北朝鮮外務省報道官はその直後にトランプ米大統領への信頼感は維持しているとしつつも「米側の態度と立場は実に遺憾だった」と非難する談話を発表した。
双方の思惑に大きな溝があるのは明らかだ。結局、北朝鮮が容認できる「段階的で同時並行的な措置に応じた非核化」と米国が求める「完全で検証可能かつ不可逆的な非核化(CVID)」との間で、またしても対立が表面化した形だ。
北朝鮮は朝鮮戦争の終戦宣言に関する問題も話し合うよう提案し、米国はこれを受け入れなかったとされる。非核化の措置が確認できない以上、当然のことだが、首脳会談での共同声明を根拠に北朝鮮は今後も自国の要求を貫こうとするだろう。
ポンペオ氏の訪朝は今回が3度目で首脳会談後では初めてだが、過去2回と異なり正恩氏との会談はなかった。北朝鮮は最初から米国との首脳会談開催自体を目標に据え、それが実現したのでもはや米高官への厚遇を重視しなくなったのではないかと疑いの目も向けられている。
トランプ氏が「歴史的」と評価した米朝首脳会談から1カ月が経過したが、残念ながら北朝鮮による非核化に向けた意味ある行動は確認されていない。
それどころか米メディアは北朝鮮が多数の核弾頭の隠蔽(いんぺい)を画策していたとする米情報当局者の話や最新の人工衛星画像を基にしたミサイル開発施設拡張の可能性を報じた。事実であれば非核化に逆行する動きだ。
ポンペオ氏は訪朝後、東京で河野太郎外相、韓国の康京和外相と会談し、北朝鮮に核を含む全ての大量破壊兵器と弾道ミサイルのCVIDを実行させるため日米韓が連携していくことで一致した。北朝鮮が非核化に向けた具体的な行動を取るまで、国連安全保障理事会決議に基づく制裁を継続することも確認した。核をはじめ北朝鮮問題をめぐる3カ国の連携を再確認した意義は大きい。
すでに中国やロシアは対北制裁の緩和を検討すべきと主張しており、韓国も北朝鮮への融和政策をさらに推し進める可能性がある。まだ制裁網を緩める段階ではないことを国際社会に訴える必要があろう。
拉致解決へ糸口掴め
ポンペオ氏は今回の訪朝で日本人拉致問題も北朝鮮に提起したという。
日本は北非核化の行方を見極めつつ、拉致解決へ糸口を掴(つか)まねばなるまい。