北代表団訪韓、確認できなかった非核化意志
平昌冬季五輪の閉会式に合わせ北朝鮮から派遣された高位級代表団が2泊3日の日程を終え帰国した。注目されたトランプ米大統領の長女イバンカ補佐官ら米代表団との接触は実現しなかった。北朝鮮が非核化にどう向き合うつもりなのか依然として不透明なままだ。
米朝対話は行われず
金英哲朝鮮労働党副委員長兼統一戦線部長を団長とする北代表団は訪韓中、文在寅大統領をはじめ韓国政府高官と相次いで会談した。会談の詳細は明らかになっていないが、北朝鮮側は「米朝対話をする十分な用意がある」と語ったという。
北代表団には外務省北米局の幹部が同行していたことからも米国と対話しようという意欲はにじんでいた。
文大統領は閉会式直前に金副委員長と会い、イバンカ補佐官らとの対話を促したものとみられるが、結局対話は行われなかった。米国側が対話の前提条件に北朝鮮の非核化に向けた意志表示を挙げたからだが、それ以上に北朝鮮側が非核化へ真摯(しんし)な態度を示さなかったことが大きい。非核化への意志表示が前提となるのは、これまでの北朝鮮核問題をめぐる数多くの交渉過程を振り返れば極めて当然のことだ。
北朝鮮が米国との対話を模索するのは、国際社会の制裁緩和や核・ミサイル開発の時間稼ぎを狙っているためとされる。開会式に金正恩党委員長の妹、金与正氏を送り込んできたのに続き、閉会式にまで大物を派遣したのは北の切迫ぶりを物語っている。
今回、五輪を舞台にした南北融和ムードの中、文大統領が米朝対話の仲介役を買って出る場面が何度か見られた。文大統領は南北対話が北朝鮮の非核化につながる道を探る考えを明らかにしたという。だが、残念ながら対話や交渉が北の非核化に無力であったことは過去十数年にわたる国際社会の努力の結果を見れば明らかだ。
文政権は大きな政治目標の一つである南北首脳会談に執着しているように見える。米朝対話はその実現に向けたステップという位置付けかもしれない。過去2回の首脳会談を見る限り、政治的にも経済的にも北朝鮮にとってのメリットの方が大きく、肝心の核問題は事実上置き去りにされた。文政権が前轍を踏まない保証はない。
韓国と北朝鮮は来月9日開幕の平昌パラリンピックを前に、北朝鮮が派遣する選手団や応援団をめぐって実務者協議を行うなど、南北の融和ムードはしばらく続きそうだ。北朝鮮は譲歩し続ける文政権の足元を見ながら融和演出を仕掛け、自分たちの思惑に沿った米朝対話の説得役として韓国を利用する恐れがある。
重要なのは北朝鮮が「最終的、不可逆的な非核化」に向け歩み出せるかだ。単なる核凍結や米国を射程に入れる大陸間弾道ミサイル(ICBM)に限った廃棄などで誤魔化されては困る。
3カ国連携の維持を
日本としては米国と共に文政権が北朝鮮との対話にのめり込まないよう日米韓3カ国連携の枠組み維持へ働き掛けを続けなければならない。