北の五輪参加、融和戦術に惑わされるな
韓国・平昌で来月9日、開幕する冬季五輪に北朝鮮が選手団のみならず応援団や芸術団など総勢数百人を送り込んでくることが決まり、連日、その話題でにぎわっている。だが、本来の競技に対する関心をよそにいわゆる「美女軍団」の動向ばかりに目を奪われかねない状況は望ましくない。融和戦術で韓国はじめ国際社会を惑わそうとする北朝鮮の思惑通りに事が運ぶのを許してはならない。
韓国・文政権が大幅譲歩
核実験と各種弾道ミサイル発射などの武力挑発を繰り返していた北朝鮮が金正恩朝鮮労働党委員長の新年辞で突如、平昌五輪参加を表明し、融和路線に転じた。それ以降、わずか1カ月足らずの間に南北当局対話や北朝鮮関係者の訪韓が相次いでおり、北朝鮮情勢をめぐる緊迫感が嘘(うそ)だったかのようだ。
もともと北朝鮮はフィギュアスケート・ペアのみで出場枠を得ていたが、それさえも申請期限切れの状態だった。それが選手とコーチの数を大きく上回る応援・芸術団員たちを送ると言いだしたのは誰の目にも別の目的があるからだと映る。
芸達者な女性たちのパフォーマンスと微笑に警戒心が緩めば、対北強硬策を見直そうという声が広がる可能性がある。世界の耳目が集まる五輪という場では、その効果はなおのこと大きいだろう。強気の金正恩政権も国際社会の制裁でじわじわと経済的苦境に追い込まれ、打開策を見いだす必要に迫られているのではないか。
韓国・文在寅政権は南北の対話・交流再開という成果に満足し、北朝鮮側の要請をまるで腫れ物に触るかのような感覚で無原則に受け入れているように見える。チームワークが何より重要なアイスホッケーの女子で北朝鮮との単一チーム結成を当局同士だけで決め、北朝鮮選手の競技参加よりも芸術団公演の段取りを優先させた。
文政権は対話再開の意義を強調するが、韓国側の説得に北朝鮮が応じたわけではない。北朝鮮が自分たちの宣伝扇動のため対北融和路線である文政権下での五輪を最大限に利用しようとしているにすぎない。
文政権は、北朝鮮の真意を十分承知の上でのことだと反論するかもしれない。北の五輪参加後に南北や米朝の実のある対話があると信じている様子もうかがえる。だが、北代表団は韓国からの経済協力を当て込んでいる節も見られる。
北朝鮮は軍創建日を開幕式の前日に変更し、70周年の節目として軍事パレードをするようだ。北朝鮮の態度に抗議一つしない文政権に世論も不満を募らせ始めたのか支持率が初めて50%台に下落した。
韓国側が大幅譲歩した上での北朝鮮参加が結局、北朝鮮の非核化につながらず、再び武力挑発が繰り返された場合、その責任は文政権に跳ね返ってくる。
安倍首相は強く抗議を
安倍晋三首相は熟考の末、五輪開幕式に出席し、文大統領との首脳会談に臨むことを決めた。行く以上は日韓「慰安婦」合意を一方的に見直したことに強く抗議し、日米韓3カ国の対北連携を乱すことがないよう釘(くぎ)を刺さなければならない。