南北閣僚級会談、韓国は対北包囲網緩めるな
韓国と北朝鮮の閣僚級会談が行われ、平昌冬季五輪への北朝鮮の参加や南北軍事会談の開催などで合意した。
だが、会談が北朝鮮ペースであったことは否めない。韓国は対北包囲網を緩めることがあってはならない。
北が平昌五輪参加を表明
南北当局者会談は2015年12月以来約2年ぶりで、昨年5月の文在寅政権発足後は初めて。韓国首席代表は趙明均統一相、北朝鮮団長は対韓国窓口機関である祖国平和統一委員会の李善権委員長が務めた。
北朝鮮は平昌五輪に高官級代表団や選手団、応援団、芸術団などを派遣し、参加する意向を正式に表明。韓国は「五輪にできるだけ多くの代表団を派遣するよう希望する」と強調し、開会式などでの共同入場、共同応援なども提案した。
北朝鮮の狙いは、融和ムードを演出して南北会談の主導権を握り、国際包囲網強化を回避することだろう。文政権が最重視する平昌五輪を政治利用し、南北経済協力事業である開城工業団地の操業再開など韓国に大幅な譲歩を迫ることも考えられる。警戒を要する。
一方、最大の懸案である北朝鮮の核・ミサイル問題をめぐっては、韓国が「非核化など平和定着のための対話を早期に再開する必要がある」との立場を表明。これに対して北朝鮮は強い不満を示したが、韓国が核放棄を要求するのは当然だ。
北朝鮮による韓国への対話攻勢については、経済制裁が効果を発揮し始めたとの見方がある一方、核・ミサイル開発のための時間稼ぎとする意見もある。いずれにせよ、日米両国と韓国を分断する狙いがあるとみて対処する必要がある。韓国は北朝鮮に乗じられてはならない。
その意味で気になるのは、文大統領が新年会見で、環境が整い、成果が期待できるという条件付きとはいえ、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との首脳会談に臨む用意があるとの考えを示したことだ。誤ったメッセージを北朝鮮に送ることにならないか。
文氏はもともと北朝鮮に融和的で、日米では国際包囲網に緩みが出ることを懸念する声も上がっている。仮に韓国が制裁緩和などに踏み切れば、中国やロシアに制裁強化を促すことも困難になる。
かねて北朝鮮は、朝鮮半島の問題は南北間で解決すべきだとする「民族自主」を繰り返し強調している。これも米国などの関与を排除する狙いだろうが、韓国で同調する動きが出てこないかも心配だ。
北朝鮮は06年のトリノ冬季五輪で冬季初の南北合同入場を果たした8カ月後に初の核実験を強行した。こうした事実も想起すべきだ。
挑発に万全の備えを
米韓は2~3月に行われる平昌五輪・パラリンピック期間中に合同演習を実施しない方針を表明しているが、北朝鮮は韓国に対して演習の全面的中止を求めている。パラリンピック終了後に米韓が演習を行えば、北朝鮮が反発してミサイル発射などの挑発を強行する恐れもある。日米韓は緊密に連携して万全の備えをすべきだ。