北朝鮮高官、露との首脳会談断る
「米大統領以外意味ない」
北朝鮮外務省の申紅哲次官が昨年7月、訪朝したロシア外務省のブルミストロフ特任大使に対し、最高指導者の金正恩朝鮮労働党委員長が会談する外国首脳は「米大統領以外は意味がない」と伝えていたことが分かった。北朝鮮情報筋が10日、本紙に明らかにした。核・ミサイル開発を急ぐ中、トランプ米大統領との首脳会談を念頭に置いて経済制裁解除などを目指す北朝鮮の戦略が改めて浮き彫りになった。(ソウル・上田勇実)
「2、3年後破綻」報告も 情報筋
北朝鮮核問題をめぐる6カ国協議の次席代表で北東アジア担当のブルミストロフ特任大使は昨年7月22日から25日まで訪朝し申次官と会談、プーチン大統領と金委員長の首脳会談を推進するよう提案したところ、申次官は「検討はしてみるが、現時点で米大統領以外の国との首脳会談は意味がない」と返答したという。
また申次官は非核化について「6カ国協議の枠組みで議論するのは非効率的」との認識を示し、「米朝会談の枠内で議論する方針を貫く」と述べたという。
北朝鮮が中国と並ぶ主要友好国のロシアからの首脳会談申し出を断り、6カ国協議への復帰を否定したのは、米国との直接対話に執着していたためとみられる。
北朝鮮の朝鮮中央通信は当時の会談内容について「(北朝鮮側は)米国の敵視政策と核脅威が根本的になくならない限り、核と弾道ロケット(ミサイル)を交渉テーブル(の議題)に乗せず、核武力強化の道から一歩も引かないという原則的立場を示した」と報じていた。
ロシアとしては北朝鮮が弾道ミサイル発射を繰り返すことへの制裁措置が国連で協議される中、制裁参加の圧力に押される格好で対北制裁を強化し、北朝鮮との関係が悪化していた中国に代わり対話に乗り出し、北朝鮮への影響力拡大を図ろうとしたが、米朝対話に固執する北朝鮮に事実上拒否された形だ。
一方、同筋によると、北朝鮮の対外経済省関係者や金日成総合大学経済学部教授ら専門家はこのほど同国経済動向を朝鮮労働党に報告。その中で「国連制裁下でも今後2、3年は持ちこたえるだろうが、制裁履行が徹底されたり追加制裁があった場合、原材料や外貨が枯渇し経済が致命的打撃を受け、経済が破綻する恐れがある」と指摘していることが分かった。
このため北朝鮮は2、3年内に米国をはじめ国際社会の経済制裁を解除させるため、「米本土への核攻撃能力を完成させることで米国を揺さぶり、米朝交渉を通じ休戦協定を平和協定に替えて国内経済の再建に専念したい考え」(同筋)だという。