北6回目核実験、「核保有国」は絶対認められぬ


 北朝鮮が6回目の核実験を強行した。今回は大陸間弾道ミサイル(ICBM)搭載用の水素爆弾の実験で「完全に成功した」と主張した。どうやら国際社会に米国への核攻撃能力を備えたと印象付け、「核保有国」として体制保証や経済制裁解除などについて米国と直接交渉するつもりらしい。だが、こうした無謀な談判は決して通用しない。

 核兵器化に着々近づく

 今回、核実験の爆発威力は昨年9月に強行された前回の約5倍に相当する50㌔㌧に達するとみられ、過去最大規模だ。北朝鮮は核弾頭の軽量化・小型化も同時に進めており、残念ながら核の兵器化に着々と近づいているのは確かだ。

 一方、北朝鮮はこの間、ICBM級を含む各種弾道ミサイルの試射を繰り返し、射程延長や大気圏再突入などの技術獲得、標的を攻撃する精度などで一定の成果を収めつつある。

 先月は北海道上空を予告なしに通過させ、日本の動揺ぶりを見物するような無礼な態度を見せた。自国の核戦略のためであれば近隣国への被害もお構いなしだ。

 北朝鮮の主張を全て鵜呑(うの)みにする必要はないが、北の米本土に対する核攻撃能力は当初、日本をはじめ周辺国が想定していた以上のスピードで高まっているのではないか。この点が最も懸念される。

 以前より間隔を狭めて強行される核実験や頻繁な弾道ミサイル発射は最高指導者・金正恩朝鮮労働党委員長の本気度の高さを物語る。何より核戦略は生き残りへ「遺業」として継承されたものだ。今の金委員長は先代以上に核開発に没頭しているとしか映らない。

 しかし、金委員長の思い通りに談判が奏功することだけはあってはならない。北朝鮮の「核保有」を認めれば、国際社会が核軍縮に向けて作った核拡散防止条約(NPT)体制が大きく揺らぎかねないからだ。

 特に北朝鮮のような独裁体制で好戦的な国が核を保有した場合、地域の安全保障に深刻な脅威となる。迎撃はもちろん、一歩踏み込んだ先制攻撃の能力保有まで万全の態勢を整え、北朝鮮に談判は決して通用しないことを思い知らせる必要がある。

 北朝鮮の核戦略を封じ込めるには日米韓3カ国の連携が不可欠だが、北朝鮮に融和的な韓国の文在寅政権が北朝鮮との対話にしばしば言及し、足並みの乱れが心配される。

 文大統領は核実験を受け国家安全保障会議(NSC)を招集し、「国際社会と共に北を最大限懲らしめよ」と指示したという。その言葉通り断固たる措置を取ってほしい。

 国連安保理の対北経済制裁も北朝鮮を完全に孤立させる実効性が問われる。最後の制裁と言われる石油禁輸まで含め検討する時だ。制裁に手加減してきたという批判が絶えない中国、ロシアを粘り強く説得すべきだ。

 さらなる挑発の恐れも

 北朝鮮は今月9日に建国記念日、また来月10日に朝鮮労働党創建記念日を迎え、今回の核実験の“成果”を内部向けに喧伝(けんでん)する一方、さらなる武力挑発をする恐れもある。引き続き警戒態勢を緩めてはならない。