「真実浮上」の声、潜む思惑 韓国左派、執拗な朴氏追及
2014年4月16日、韓国南西部の珍島(チンド)沖海域で沈没した大型客船セウォル号が、事故から約3年ぶりに海中から引き揚げられたが、事故の真相を隠蔽し責任を回避したなどとして、いまだに朴槿恵前大統領を非難している左派系の野党、マスコミ、市民団体は船体引き揚げでさらなる朴氏追及に意気込んでいる。
(ソウル・上田勇実)
5月大統領選へ世論扇動
憲法裁否定にも蒸し返し
セウォル号引き揚げに便乗
「真実も引き揚げなければならない」。海底に沈んだままだったセウォル号の引き揚げが始まり、リベラル紙ハンギョレ新聞は社説でこう主張した。
左派系の最大野党・共に民主党の秋美愛(チュミエ)代表は船体引き揚げを「冷たい海底から3年ぶりに浮かび上がる真実」と表現、あたかもこれから沈没事故の真相が明らかになるかのような口ぶりだ。
そもそも船体引き揚げは行方不明者9人の手掛かりを探すくらいで、事故をめぐる新しい核心的事実が明らかになる可能性は低い。
事故は過積載や船体の不適切な改造など主に運航会社や船のオーナーによる安全無視の無謀行為に主な原因があり、すでに過失責任などで船長をはじめ関係者は有罪判決を受けた。常識的に判断すれば真相究明と責任追及は終わっているはずだ。
ところが遺族のやり切れない感情に便乗するように左派系の野党やマスコミは、朴前大統領が真相を隠し、乗客乗員を救助する責任を果たさなかった結果、大惨事に至ったという印象操作に執心している。
これまでベールに包まれていた船体という証拠が出てくれば、「朴氏の罪」を立証できるという論法だ。
朴前大統領弾劾を審理した憲法裁判所は決定(判決)文でセウォル号沈没事故に対する「責任」を否定した。
朴氏の「生命権保護義務」について「直接救助活動に参加しなければならないなど具体的で特定の行為義務まですぐ発生するとみるのは難しい」とし、「誠実な職責遂行義務」に対しては「判断の対象ではない」と退けた。
それにもかかわらずハンギョレ新聞は判事2人の少数意見に「(事故があった)8時間もの間、国民の前に姿を見せなかったのは憲法と国家公務員法の誠実義務違反」とあることに飛びつき、朴氏追及のペンを進めている。
野党陣営、左派マスコミが弾劾された朴氏に対する追及を蒸し返すのは、5月に迫った次期大統領選を多分に意識したものだ。共に民主党の文在寅(ムンジェイン)氏は支持率30%前後でトップを走り続けているが、「反朴氏感情」を扇動し、拡散させることで形勢をさらに有利にしたい考えのようだ。
ところで、セウォル号引き揚げの一方でもう一つの沈没事故もニュースになった。10年、黄海の白翎島(ペンニョンド)近海で北朝鮮により撃沈された哨戒艦「天安艦」の事件から26日で7年を迎えるのを受け、追悼行事などが行われたのだ。
文氏は12年にこの事件と関連し「現政権(李明博(イミョンパク)政権)の安保無能の間隙(かんげき)を突かれた」「盧武鉉(ノムヒョン)政権時の南北共同宣言を否定し廃棄した結果」などと述べ、北朝鮮よりもむしろ自国政府を批判した人物だ。
その文氏はセウォル号の海面への引き揚げ作業が終わった24日、国民が再び事故の記憶を呼び起こし、哀悼の雰囲気が広がるのを確認するかのように次期大統領選への出馬を表明した。しかし、哨戒艦撃沈事件をめぐる文氏の発言を大多数の国民は知らないか、忘れ去っている。