韓米FTAの行方


韓国紙セゲイルボ・コラム「説往説来」

 2006年に交渉を開始し6年後に発効した韓米自由貿易協定(FTA)は孝行息子の役割を果たした。盧武鉉大統領の先見の明によって始まり、李明博大統領が大変な批判を浴びながらも実現させた。与党の時に賛成し野党になると反対した政治家たちも尻尾を巻いている。いとこが土地を買えば腹が痛む(他人の成功をねたむことを表す慣用句)のか、隣国が目の色を変えた。日本は韓米FTA発効の翌年、環太平洋連携協定(TPP)に飛び込んだ。

 光に影はつきものだ。ドナルド・トランプ米大統領当選者はFTAを放置しない構えだ。彼は(選挙戦で)TPPは「災い」だと言って脱退を公言した。日本の安倍晋三首相は慌ててトランプに会ってTPP脱退を思いとどまらせようとしたようだ。

 トランプは北米自由貿易協定(NAFTA)も手術台に送るつもりだ。再交渉と脱退のカードを検討している。メキシコ産の自動車に35%の関税をかけると言っている。中国産の輸入品には特殊関税45%のカードを掲げて脅しをかけている。

 韓米FTAも風前の灯火(ともしび)だ。チェ・ソギョン元FTA交渉代表は「実弾の準備を急がなければならない」と心配している。米国の交渉再開要求に備えて、貿易取引の被害・赤字の規模をアイテム別に算定して対応戦略を準備しなければならないということだ。

 問題は(朴槿恵)政府発足時に外交部(部は省に相当)所属だった通商交渉本部を産業通商資源部に移し、韓米FTAの専門性が失われた。熟練したノウハウを蓄積した交渉専門家たちは外交官だったが、彼らは産業通商資源部に異動しなかった。国会の批准など仕上げの作業を行った外交部の面々は当時、機能の弱体化を招来する組織改編が理解できなかった。通商交渉の経験が全くない人物が初代の産業通商資源相に任命されると、通商交渉本部の官僚たちは「意外」だと言って仰天した。通商交渉本部の産業通商資源部への移管は崔順実容疑者の国政介入のためだと最近は解釈されている。

 ドナルド・マンズロ米韓経済研究所(KEI)所長は昨日、韓米クラブ(奉斗玩会長)が朝鮮ホテルで主催した講演を通じ、トランプ氏は韓米FTAに手をつけないだろうと予想した。米下院外交委員会アジア太平洋小委員長も務めたマンズロ所長は、米国は損害を被っていないとその理由を説明した。彼の予測が正しければ幸いだが、そうでない場合には我々は超非常警戒令を発動しなければならなくなる。

(11月19日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。