大統領選出馬 潮目の判断 朴政権マヒで野党系が優勢
韓国・国政介入疑惑発覚から1ケ月
韓国の国政介入疑惑で朴槿恵大統領に対する弾劾の準備や下野を求める大規模デモが続く中、来年の大統領選をにらんだ各候補の動きにも関心が集まっている。リベラル色の濃い野党系候補が有利といえそうだが、新たな保守勢力が結集すれば混戦になる可能性もある。(ソウル・上田勇実)
凱旋潘国連総長にも勝算
与党分裂で新保守結集か
朴大統領は歴代最低を更新し4%、与党セヌリ党は政党別で2野党に次いでついに3位に転落――。
これは朴大統領が長年の友人、崔順実被告の国政介入を許した疑惑で国中が大騒ぎになってから1カ月が過ぎた政権・与党の支持率だ。国民にそっぽを向かれ、「もはや朴大統領は過去の大統領」(韓国メディア)という指摘まで受けている。
仮に朴大統領が今すぐ辞任して次期大統領を選ぶ選挙をした場合、ほぼ間違いなく野党系候補が勝つことを意味する数字でもある。
今のところ朴大統領は「国政の混乱、中断は避けるべき」(大統領側弁護士)との理由から辞任圧力を突っぱねている。
しかし、週末ごとに繰り返される大規模な大統領退陣デモ、野党が12月9日の会期までに表決を目指す大統領に対する国会の弾劾決議、政治的中立を担保した特別検事制による大統領への捜査、テレビ中継される国政調査など朴大統領を追い込む「仕掛け」が幾重にも待ち構えている。
野党系候補で最も有力視されるのは前回の大統領選で朴氏と一騎打ちを演じた末、敗れた文在寅・元共に民主党代表だ。対北融和や反米・反日路線で国際的に物議を醸した盧武鉉大統領の最側近だった人物だ。
野党は国政介入疑惑を追い風に朴大統領を辞任に追い込み、早期に大統領選を実施して政権交代を実現させたい考えだが、こうした姿勢が今回の事態を大統領選政局に変えようという政治的計算と映れば世論の反発を買う可能性もある。
一方、疑惑が本格化する前まで支持率トップを走り続けていた潘基文・国連事務総長にも勝算はある。
潘氏は与党による擁立が有力視され、本人も出馬を示唆する発言をしていた。ところが、今回の事態で支持率は文氏を下回り、苦戦も予想される与党からの出馬を受け入れるのか微妙な情勢になっている。
そこで「非朴系」と呼ばれる、朴大統領とは距離のあった与党非主流派が離党し、新たな保守勢力を結集した場合、そこから出馬を準備する道が開かれるとみられている。
あとは時間が経過し、世論の「反朴大統領」感情が治まるのを見極め出馬宣言するという段取りだ。
潘氏は韓国で立志伝中の人物に数えられ、外交官一筋のクリーンなイメージで好感度が高い。一時、韓国では英国ネット情報発の報道として、潘氏が任期終了となる来月のクリスマス休暇に合わせ“凱旋”帰国し、朴大統領に辞任を説得した後、国民の熱烈な支持を受けて大統領選出馬を表明する――というシナリオが話題になった。
与党非主流派の実力者、金武星議員は朴槿恵、文在寅両氏以外で最も支持率の高い大統領候補を推す用意があると発言し、新保守派大統領のキングメーカーとしての役割を果たすとほのめかしている。今後の政界再編を予告するものとして注目を浴びている。
韓国政治情勢に詳しい金亨俊・明知大学教授は、新保守勢力が「有力候補の一人、第二野党・国民の党の安哲秀議員が参加し大連帯に発展することもありえる」と指摘する。
全国的な朴大統領バッシングで自分たちに有利な情勢が続いているうちに早期大統領選にこぎつけたい野党陣営と、新勢力の結集を模索し巻き返しを図りたい保守陣営。これらを中心に今後、大統領候選をにらんだ駆け引きは激しさを増しそうだ。