盛り上がり欠いた釜山国際映画祭


韓国紙セゲイルボ

「セウォル号」作品めぐり対立

 「活気を失った」―。今年の釜山国際映画祭(BIFF)を見守った参加者が異口同音に発する言葉だ。

 紆余曲折の末に開幕したが、例年と違って浮き立った雰囲気はない。映画「ダイビング・ベル/セウォル号の真実」上映をめぐる映画祭と釜山市の対立、主要映画団体の不参加、台風18号による行事場所移転、不正請託および金品授受の禁止に関する法律(キム・ヨンナン法)にともなう各種行事の取り消しなど、三重苦が重なり、祝祭の雰囲気が盛り上がらなかったためだ。

 開幕前日、南部地方を強打した台風18号は海雲台に設置された映画祭広場を破損した。ここで開かれる予定の行事が「映画の殿堂」に移して行われている。映画祭広場は監督との対話、主要俳優インタビュー、舞台あいさつなどが行われ、映画関係者とファンが交流でき、祝祭の興味をかき立てていた。だが、映画の殿堂ではこうしたイベントも盛り上がらない。

 キム・ヨンナン法施行も祝祭の雰囲気を沈める要因として作用した。ロッテエンターテイメントなど韓国の代表的な配給会社は今年パーティーを開かなかった。法施行初期であることと、どんな部分が法に抵触するのかが分からず、最初から行事を取り消した。

 彼らはこれまで、映画祭の期間、ホテルなどでパーティーを開き、封切りを控えた映画と製作・企画中の作品などを紹介した。1000人以上の映画関係者が参加するパーティーでは関連ビジネスと相互交流が行われた。

 だが、パーティーが消え、映画祭広場を訪ねる映画関係者も減って、24時間営業していた尾浦港の刺身料理屋も夜11時には門を閉める始末だ。ある映画関係者は、「法の趣旨は理解するが、毎年開いてきたパーティーや打ち上げまで消えるなら、祝祭の雰囲気が沈んで、地域経済にも役に立たない」と話す。

 映画祭が盛り上がりに欠けた最大の要素は「ダイビング・ベル」上映をめぐる映画祭側と釜山市の対立の後遺症という解釈が一般的だ。余波は大きい。国内の中堅監督は予定通りに映画監督組合のボイコット方針に従った。釜山市の謝罪と釈明なしで開かれる映画祭には協力しないという。

 映画評論家トニー・レインズは、「市長が露骨に不当に干渉したことはファッショ的行動」とし、「市長がすべての告訴を取り下げるのが最もやさしい解決策」と助言する。以前の“興奮”のある映画祭をまた見たい。

(キム・シンソン文化部次長、10月11日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。