北朝鮮ミサイル発射、迎撃能力の点検・強化を急げ


 北朝鮮が東部の元山付近から新型の中距離弾道ミサイル「ムスダン」2発を発射し、このうち2発目が高度1000㌔以上まで上昇した後、約400㌔東方の日本海に落下した。同型ミサイル発射で一定の技術的成果を挙げたとする見方が広まっており、全土を射程に入れられている日本としては迎撃能力の点検と強化を急がねばならない。

 日本にとり「深刻な懸念」

 中谷元・防衛相は「ミサイルとして一定の機能を示した」との認識を表明し、日本の安全保障にとって「深刻な懸念」と警戒感を露(あら)わにした。

 朝鮮中央通信は発射後、これまで北朝鮮の弾道ミサイル発射で大きな課題とみられていた大気圏再突入に必要な弾頭部分の耐熱性能を確保したと報じた。これが事実とすればムスダンは運用段階に入ることを意味し、日本をはじめ周辺国にとり北朝鮮のミサイル問題は重大な局面を迎えつつあることになる。

 日本は北朝鮮の弾道ミサイル発射に対し「万全の態勢」と強調してきた。だが、その核となるミサイル防衛(MD)は本当に盤石なのか。再度の点検を求めたい。

 ミサイル発射の兆候はまず米国の早期警戒衛星やイージス艦などのレーダーによって捉えられ、その情報分析を基に迎撃システムが稼働する。

 次に日本近海で待機するイージス艦の海上配備型迎撃ミサイル(SM3)と首都圏や沖縄本島などに配備される地対空誘導弾パトリオット(PAC3)による二段構えで北朝鮮の弾道ミサイルを撃ち落とす。SM3はミサイルが上昇していく高高度の段階で迎撃、その撃ち損じが落下してくる上空数十㌔で迎撃するのがPAC3だ。

 いずれも近年の実験では極めて高い命中率だったと言われており、同時多発的な発射など厳しい条件下でも高い迎撃能力を見せたという。

 ただ、ムスダンの場合、数分で日本に着弾することが予想され、不手際や誤作動は絶対に許されない。迎撃能力を麻痺(まひ)させる攪乱(かくらん)戦術も想定しなければならない。迎撃が成功しても、その破片が地上に落下してくることを心配する声がある。

 北朝鮮はムスダンの試射を4月以降2カ月余りの短期間に繰り返し、空中爆発などの失敗を重ねながら今回6回目でようやく成果を挙げた。

 韓国動乱勃発の日に当たる25日や最高人民会議が開かれる29日を前に国威発揚を狙う最高指導者・金正恩委員長の命令で、成功するまで試射を止(や)められなかったとする見方がある一方、技術改良のためテストを重ねた可能性もある。

 北朝鮮は今後も弾道ミサイル発射を繰り返す構えを見せている。多額の予算が必要だが、二段構えのMDを補完する意味で高高度防衛ミサイル(THAAD=サード)を導入すべきだ。

 日米韓3カ国で連携を

 北朝鮮の弾道ミサイル発射は言うまでもなく国連安保理決議違反だ。決議を無視し続ける北朝鮮のさらなる挑発を防ぐには国際社会のより厳しい制裁と共に日米韓3カ国がMDをはじめ防衛上の連携を確たるものにしなければならない。