内助の女王


韓国紙セゲイルボ・コラム「説往説来」

 国会の要職を経験したある政治家の夫人は夫の月給をリュックに入れた。夫が国会の役職を得て最初の月給だ。還暦が近い夫人はリュックを背負ってしばらく歩き回ったという。生涯政治家の夫からもらった最初の生活費に感激したためだ。一体毎月もらう議員歳費はどこに消えたのか。それは選挙区の管理、秘書や職員の月給に全部使い、生活費は田舎の病院で働く自分が賄ったという夫人の苦労話が切実だった。

 有力政治家の夫人の多くは辛苦の人生を送っている。選挙運動に加え、選挙区の管理、政党行事への参加、住民の苦情相談などは基本だ。昔は家を訪れる記者の朝食や夜の酒肴の準備も夫人の役目だった。夫の政治的な浮沈に人生が左右される。金大中元大統領の夫人、李姫鎬女史はよく“政治的同志”と呼ばれる。二人の名前を並べて刻んだ門札で有名なように、政治の苦楽を共にした。金泳三元大統領の夫人、孫命順女史は“陰の内助型”で、政治的な山場の度に役割をきっちり果たした。1992年の大統領候補選出選挙の時は、スイカを1個ずつ持って旧民正党系議員の家を全て訪ねた。3党統合に反対した崔炯宇議員を説得したのも彼女だったという。

 昔も今も政治家の夫人はつらい。現在のような選挙期間はなおさらだ。出馬した候補者の夫人はもちろん、各政党代表の夫人たちも内助の競争に突入している。金武星セヌリ党代表の夫人は支援遊説で全国を回る金代表に代わり選挙区を守る。共に民主党の金鍾仁代表と国民の党の安哲秀共同代表の夫人は名前が同じだが、金代表夫人が静かな内助型である一方、安代表夫人はソウル大医学部教授で普段も選挙区の管理にかなり積極的だ。

 李明博元大統領夫人の金潤玉女史も夫に代わり親李系候補の遊説現場を回った。金女史はセヌリ党の徐清源最高委員夫人の李善和氏と共に政界で指折りの“戦略参謀型”だ。李明博、朴槿恵両候補が熾烈(しれつ)に競った2007年ハンナラ党大統領候補選出選挙の時は「李善和、金潤玉両氏の組織の争いも見応えがあった」と聞く。内助の秘訣を尋ねると政治家の夫人たちの答えはよく似たところがある。「選挙区を歩き回って常に民心に触れて率直に伝える」。長年仕えた参謀も言いにくい苦言を厭わないということだ。“政治的同業者”だけのことはある。私たちが政治家に投票する瞬間、夫人も選んでいるわけだ。 

(4月2日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。