最新統計に見る現代韓国人像

家族の絆、希薄化に拍車

 若者は結婚への執着がなくなり、老いも若きも一人暮らしが増え続けている――。儒教文化が根強く残り、家族を大事にするとみられがちだった韓国の最新統計からこんな現代韓国人像が浮かび上がった。背景には就職難や女性の社会進出などの事情があるとみられる。(ソウル・上田勇実)

結婚推進、離婚反対ともに減

就職難や宗教離れ影響か

 韓国統計庁が先週発表した「2015韓国の社会指標」によると、14年に結婚に対する考え方を満13歳以上の男女を対象に尋ねた結果、「必ず結婚すべき」「結婚した方がいい」と答えた人は合わせて56・8%で、08年(68・0%)、10年(64・7%)、12年(62・7%)と減少が続いている。

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2月5日、旧正月連休で帰省先に向かう列車に乗るためソウル駅に姿を現した家族連れ(撮影・韓国紙セゲイルボ)

 また離婚については「いかなる理由があろうと離婚してはならない」「わけがあってもできるだけ離婚すべきでない」が合わせて44・4%。こちらも58・6%だった08年以降、減り続けている。

 結婚生活にこだわらないこうした結婚・離婚観は、実際の婚姻・離婚届け出数にも表れている。14年の婚姻件数は30万5507件で、年間件数ベースでここ四半世紀の間に約10万件も減った一方、離婚件数は11万5510件で約20年前に比べ7割も増加している。

 若者が結婚に二の足を踏む理由は「青年失業、結婚費用、住居費用、将来の子供の教育費などが複合的に作用した結果で、特に大学を卒業しても正社員として就職する確率が低い状況」(韓国紙・韓国日報)が直撃しているようだ。

 統計をさらに詳しく見ると、結婚忌避と離婚許容の傾向は男性よりも女性の方に強く見られる。「結婚すべき」は男性61・5%に対し女性52・3%、「離婚はダメ」も男性49・1%に対し女性39・9%と、いずれも10ポイント近く女性が少ない。これは社会進出で一人でも十分生きていける女性の自信観の裏返しともとれ、長く男性中心社会だった韓国としては皮肉な「女性上位」現象といえる。

 今回の統計では一人暮らしが増えていることも改めて分かった。一人暮らし世帯数が全世帯数に占める割合は1980年に4・8%だったのが30年後の2010年には23・9%まで増えている。これは「若年層は婚期を遅らせ独立する人が多く、高齢者は息子・娘たちと同居しない人が増えた」(同庁)ことによるとみられる。いずれも「家庭のぬくもり」とは無縁の選択と言えよう。

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 ただ、高齢者の場合は特有の事情もあるようだ。韓国中部の忠清南道にある農村で母親が一人暮らしを続ける朴鍾一さん(自営業、54歳)は「田舎で生まれ育った母がソウルに住む子供たちの家に来ても昼間は仕事や学校で誰もいなくて退屈なだけ。結局、地元の近所付き合いが恋しくて帰りたいと言い出す」と話す。

 このほか統計では一人暮らし増や少子化に伴う世帯平均人数の減少、3世代以上が同居する世帯の減少などからも家族の縮み志向とも言うべき傾向が浮き彫りになった。

 ちなみに10年の世帯平均人数は2・7人で、昨年の日本の2・49人と比べそれほど差はないが、世帯平均人数が4人を割ってから3人を割るまで日本の場合は約30年かかっているのに対し、韓国の場合はわずか15年。韓国は日本の倍速で世帯縮小が進んでいる。

 家族の縮み志向には、近年の韓国人の宗教離れも影響している可能性がある。各種調査によれば、韓国人は人口の半数が宗教を信じ、残り半分が無宗教だが、20代・30代の結婚適齢期の若者の場合、家庭生活の大切さを教えるキリスト教をはじめ宗教から遠ざかる傾向があり、無宗教は20代で7割、30代で6割に上る。