安保理対北制裁、今度こそ実効性を確保せよ
4回目の核実験と事実上の長距離弾道ミサイル発射を強行した北朝鮮に対する国連安全保障理事会の新たな制裁決議が採択された。
過去の制裁が効果を上げてこなかったことが、北朝鮮の暴挙を許す結果となっている。今度こそ制裁の実効性を確保し、圧力を強化しなければならない。
カギを握る中国の姿勢
決議には、ロケット用を含む航空燃料の北朝鮮への輸出禁止など原油供給の制限が盛り込まれた。北朝鮮に出入りする全ての貨物に対する査察も義務付けた。これまでになかった厳しい措置だ。核・ミサイル計画の原資となる外貨獲得を封じるため、北朝鮮からの石炭や鉄、鉄鉱石の輸入制限も明記された。
核・ミサイル開発への関与が疑われる北朝鮮の政府関連団体に資産凍結措置を科したり、北朝鮮の銀行が国連加盟国で支店を開設することを全面的に禁じるなど、金融制裁も強化された。北朝鮮への送金や決済を困難にする狙いがある。
だが、制裁に抜け穴があっては実効性は保てない。その意味でカギを握るのは中国だ。中国は今回の核実験、ミサイル発射に強い怒りを覚える中、北朝鮮への厳しい圧力や外交・経済関係の断絶は控える姿勢を示してきた。地域の安定維持を優先したと言える。
中国と北朝鮮との間の貿易は極めて活発だ。北朝鮮の対外貿易の約9割は中国が占める。北朝鮮の経済を依然として中国が支えている。中国は制裁への支持に踏み切ったが、北朝鮮との貿易の蛇口の閉め方をどう管理するかが実効性を左右する。
米国防総省は先月、北朝鮮の軍事力や安全保障戦略に関する議会宛ての報告書を発表した。軍や兵器の近代化に多額の資金を投じている北朝鮮による挑発的行動について、米国や世界にとっての「深刻な脅威だ」と位置付けている。
また、金正恩第1書記が昨年1年間で権力を固めたとの見方を示した。金第1書記は最高指導者になって以後、核実験と長距離ミサイルの発射を2回ずつ行ったことになるが、この回数は「先軍政治」を標榜(ひょうぼう)した父親の故金正日総書記に並ぶ。
さらに同報告書は、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射装置を少なくとも1基保有していると明記して警戒感を示した。ミサイル戦力を多様化して核戦争時の生存能力を高めることや、近隣諸国への新たな方法による威圧が目的だとしている。
米韓両国は、北朝鮮とのいかなる対話でも非核化が最優先との一貫した立場を強調する。一方、韓国では元軍人らから北朝鮮の核施設に対する攻撃論が浮上している。米国は早急に、地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備について韓国と協議を進めなければならない。
日本は米韓などと連携を
安保理非常任理事国である日本は決議を忠実に履行することはもとより、北朝鮮の核・ミサイルの脅威に対処するため、軍事情報の共有、専門的協議を進めるなど、米国や韓国をはじめとする国際社会と引き続き緊密に連携していくべきだ。